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□退魔師列伝 魔刃朱殺 第六話C
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魚は体型からしてその場で方向転換は出来ない。どうしてもほんの少しは前進する。狙いはそこだ。更に、一日中追いかけ回されて疲労している魚がいるはず。
アイツだ。
あとは光の屈折率を考慮に入れ、すくうのみ!
「ハイ残念〜。」
オバサンのセリフにイラッとくる。
「あらら、まぁ初めてだから仕方ないよね。」
「…………。」
あーあ、美作サンにあげたかったのに。うまくいかないもんだ。
「じゃあ刃内クンの仇はとってあげる。」
「よろしく。」
それにしても、なんだって出来そうとか言わなくて良かった。それこそ顔面から火炎放射する。
真剣に水面を見つめる美作サン。
ついついその表情を見入ってしまう。なんだかずっと見ていたいような。
いつからだろうか。こんな感情を持ったのは。今まではこういう楽しさを知らなかったはずだ。
バカやって騒いでその場で楽しんで。終わったら次の日にまた違う面白い何かをやる。
そういう遊びしかしてこなかったし、それが楽しさだと思ってた。
でも今の充実感は違う。
もっと、こう、じんわりと満たされていくような楽しさ。余韻の残るような実感。
あぁ、今俺は楽しいと思ってる。
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