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□退魔師列伝 魔刃朱殺 第五話G
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「…は?」
「…え?」
今、微かに動かなかったか?
「…刹那?」
「いや、俺に訊かれても…。」
ゆっくりと、弱々しくだが、顎(アギト)が開いていく。
「ゥグルルァァァァアアァァッ!!」
「「逃げろぉぉぉぉッ!!」」
二人揃って走り出す。かなり必死に。
「おい!動けないんじゃないのか!?」
「うるせぇ!あんだけやれば動けないと思うだろうがっ!あっ…!」
「あ?」
「予想だが、劫が爆炎系の技を使った事で耐性が出来てしまったのかもしれない。その上に巧く加減が出来たからギリギリでダメだったとか…。」
「そんなことで…?キマイラってそこまですごいの?」
「可能性はかなり高い。」
ふと、立ち止まる。
「どうした?もう少し距離とって作戦を練ろうぜ。」
「いや…。」
助かる方法は一つだけある。でもその方法は、自分勝手で卑怯な方法。大義の為に犠牲も已む無し、というけれど、そんな風に割りきれないし強くない。しかし、真に強ければ自分の欲しいものは全て手にはいる。
俺は弱い。
ギリ、と奥歯が鳴った。
俺は弱い。だから、せめて決断だけはしっかりしなくちゃいけない。俺は弱い。ちくしょう。俺が弱いからこうなった。
…強く、なりたい。
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