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□退魔師列伝 魔刃朱殺 第五話E
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しかしあまりの急激な変化に精神がついていかないのか、少年は苦しそうに呻いている。
「それでこそ当たりってもんだ!」
前回と変わらず鉄の拳を打ち出す軌鋼。
「ガァッ!!」
その拳より速く獅子の腕が伸びていた。獅子の腕の、その末端にある爪は鉄のような皮膚を斬り裂いた。
「なぁにぃッ!?」
軌鋼の動揺。
侮りきっていた相手のまさかの反撃。
そして恐怖の再臨。
あの時感じた怖気は事実だったと認識を改めてしまった。
「な!…なッ!?」
今さらながら防衛に意識を費やす。もはや攻撃は考えられない。
追撃を防ぐ為に両腕を上げたが、凄まじい衝撃に弾かれ奇妙な方向に捻れ曲がってしまった。
「グオォォォォォォォォッ!!」

 狂乱・獅子咆哮拳

貫いた。現実に少年の両腕が軌鋼の体を貫いた。
出血こそほとんど無いものの、鉛色の肉片が少し飛んだ。
「あ、あぁ…。」
絞り出した微かな悲鳴。しかし、今の少年には声が届かない。それどころか顔すらもケモノになりつつある姿からは意識が無いように見える。
「ガァッ!」
軌鋼は地面に叩きつけられ、その衝撃で穴の空いた腹から右の脇腹にかけて肉が千切れた。
「ぎぃやぁああぁッ!」
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