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□退魔師列伝 魔刃朱殺 第五話D
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「どちらか死んだ方が、名前を聞いた意味がなくなる。」
「死ぬ気はねぇな。」
「私もだ。」
六枚の羽を振動させ、また飛んできた。
それに合わせて、ナイフを振るう。あの速さならきっと避けられない。
ブブブッ!!
途端に羽音が大きくなった。
「なんて旋回の速さ…!」
高速で移動しながらこっちの動きを観察し、完璧に見切ってかわした。
おまけにさっきと反対の肩を斬られた。
「………。」
無言の緑の魔。
戦闘に入ると無駄に喋らないらしい。
「くっ!」
またも迫る緑須。ナイフで迎撃するもかわされる。
同時に腕やら脇腹やらを斬られていく。
幸いにも深くは斬られないが、こう何ヵ所もやられると体力が奪われそうだ。
そうなるその前に準備が必要だ。

何度めかのすれ違い。至るところをなますぎりにされていた。
「………。」
「………。」
互いに言葉を交わさず睨み合う。
…やられっぱなしだ。自分に腹立ってくる。いいかげん対処出来ないと。
細かい羽ばたきの音に乗り、薄い六枚の武器を向けてきた。
「こうなったら!!」
ギリギリまでひきつけて、飛び膝蹴りをはなった。ナイフで攻撃したらまた避けられる。そう思案しての苦肉の反撃。
ゴッ!
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