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□退魔師列伝 魔刃朱殺 第五話C
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誇りを持った男と持っていない男では詫びの重みが違う。心の籠っていない礼をされても伝わってくるモノがない。でもこの男は誇りというモノを持っている気がする。頭を下げる前からそれらしいモノは感じていた。そんな男が土下座をしている。それが伝わらない生雪ではないと思うんだが…。
生雪の顔に表情は、無い。
こんな顔が出来るのかと驚いてしまった。
いざというとき、俺はどう行動するべきか…。止めるべきか。けど、止める理由はあるか…?
「違う。」
不意に生雪が何か言った。俺には理解出来ない。
「お前は違うと言ったんだ。黒髪の方を出せ。」
淡々と、怒りも悲しみも見せずに生雪は言う。相変わらず俺には言ってる意味が解らない。
「…………。」
何も言わずに双形は立ち上がった。
「心格反転。」
双形がそう呟くと、白い髪が黒くなり、白い右の瞳が黒くなった。そして、纏う雰囲気が反転した。しかし、左目の両儀の瞳だけは変わらなかった。
「俺の名前は双形刹那(フタナリ・セツナ)。」
正直、おいてけぼりをくらっていた俺はとんでもなくビックリしている。
だって形は変わらないのに色と雰囲気が反転したんだ。そんなの今まで見たことがない。
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