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□退魔師列伝 魔刃朱殺 第五話@
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二本先の外灯のあたりから誰かが歩いてくる。この先の道には僕の家と山しかない。だから向こうから他人が歩いてくる事はまず無い。
お母さんはまだ帰ってないはず。だからあとはお父さんしかいない。けど、背が低い。自分と同じぐらいだろう。何で子供がこんな時間に…?
一本先にあった外灯の下ですれ違う。
気になって少し顔を覗いてみた。
「えっ……!?」
思わず声が出てしまった。
すれ違った少年の瞳は対極図だったから。円の中で白と黒が対立している図だ。
そんな人間がいるのか?途端に不安になった。嫌な気がしてならない。
怖い。早く帰らないと。
走り出す。夢中で走る。クラスで一番速い足だ。暗くて途中に何度も転びそうになった。それでも早く帰らなきゃと誰かが僕を急かし続ける。だから全力で走り続けた。
「ただいまぁッ!!」
早くお父さんの顔が見たかった。誰よりも強くて、いるだけで安心できるお父さん。
いつもめんどくさがって玄関まで顔を出さないけど、奥の居間から「おかえり」と言ってくれる。その声を聞くととても安らいで帰ってきたんだって思える。
思えるはずだった。
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