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□退魔師列伝 魔刃朱殺 第四話A
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大鎌はナイフを通過し、さらに寥の首も通過していった。そして、死神は元の色を取り戻す。
大鎌を引けば寥の首は跳ぶ。
寥は前方向に力をかけていた為、前に身体が傾く。反射的に左に見えた大鎌の柄を掴む。
死神が引いた鎌につられて寥も死神に近付く。
はっ!今か!?
突出したナイフは感触もなく腕ごと黒い布を通過する。
クッソ!せっかく懐に入れたのに…。突然で反応が遅れた。
急いで全身を通過させて、そのまま走って距離をとる。

どうすればいいんだ、こんなの?いくら攻撃しても透化されたら当てようがない…。
こっちが攻撃する瞬間だけ透化していて自分が攻撃する時にだけ透化を解けば無敵じゃないか。
勝ち目がない…。物理的な攻撃は全て意味を成さない。ナイフと拳闘しか出来ない俺にはどうすることも出来ない。
チラと死神を見る。
眼窩の奥から溢れる微かな光が灯火のように揺れた。全身を覆っている黒い布が風ではためく。その姿の不気味さは、確かに死神を連想させられる。
風と共に一枚の木の葉が死神に触れた。
そういえば今は透化していない。透化したままじゃないのは何故だ?もしかして…!
「来い!」
「………。」
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