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□退魔師列伝 魔刃朱殺 第三話@
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夜の公園を歩いている。
時折、叢雲の間から月光がさしこむ。
誰もいない公園は海底のような静寂さを湛えていた。昼間の喧騒とは違い、逆の貌がよく観える。まるで公園にいた全ての生物を消してしまったかのような。そんな残酷な貌。
「少しくらい雲があった方が月の光が良く見えるなぁ。」
自分の声がやけに響く。
静かだ。自分が存在してるかも疑しく感じる。
たまに頬を打つ生暖かい風が心地良い。季節特有の風を感じると、この国にいて良かったと思う。
「ふぅ…。」
最近、オカシイ。
百鬼夜行に入ってから魔と闘うようになった。それは自分で決めた事だから精一杯やっている。
けど、実際には低級の魔と闘うのが限界のようだ。
少し前に強敵と出会って、ぼろ負けした。元は強い魔だったらしいが、傷をおって力が衰えていた。そんな状態でも、俺は負けた。
俺は弱い。けど、そんな事は努力しだいでどうにでもなる。
最近、オカシイ。
ある衝動に支配されそうになる。一人でいる時、というか周りに知人がいない時。それも人気のない時。支配されそうになる。
殺害衝動。
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