短編

□狂人思考
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「工藤って良いヤツだよなぁ?」
唐突に友人がそう言ってきた。
「そう、かなぁ?」
などと返してみる。
それはそうだ。良い人を演じているんだから、そう思われなければ困る。
何故、演じていなければならないのか?
それは自分が良い人ではないと理解してるからだ。自分が変人だと理解してるからだ。ようはイカれてるんだ。ネジがぶっ飛んでいるんだ。
変人だとバレれてしまえば世間で生きていけなくなる。だから隠す為に良い人を演じている。生活しやすくする為に良い人を演じている。
「だって優しいじゃん?」
「う〜ん。山上だって優しいじゃん?」
友人の山上は優しい人間だ。それが演技かどうか見破る術はない。けど、演技ではないと思う。
山上にそんな余裕は無い。演技をしている余裕は無い。
山上の家は貧乏だ。
家族の所為で山上に多大な圧力がかかっているらしい。家族の中に悪がいるらしい。
でも山上は強い人間だ。何か嫌な事があっても時間が経てばいつも通りに戻っている。曰く、家にいるより学校の方が落ち着く、らしい。
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