短編

□神なんて信じない
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「俺は神を信じない。」
いたとしても信仰に値しない。
もし、神が万物の運命を担っているのだとしたら俺は神を恨む。良い事も悪い事も神の手のひらの事象で全て操られているのだとしたら俺がこれまで努力して行ってきた事や、それによって生まれた様々な感情に何の意味もなくなる。何より、俺の大切なモノを奪い過ぎた…。
俺は酷く苦しくて悲しくてやるせなくて、そんな顔を見られたくなくてこんな所に来た。
あまり高くないビルの屋上。都会のくすんだ夜景が見える。周りのビルの方が高いからあまり綺麗な景色ではないから、こんな所に人なんて来ないだろう。
「あなたは神を信じますか?」
いつからいたのか、後ろから声をかけられた。今は驚く事も出来ないぐら心が憔悴していた。
それにしても最悪な状況で最悪な質問。
「神なんて信じない。いたとしても信仰に値しない。」
振り向いてさっき言った事と思案した事を合わせて言った。
「おや、手厳しいねぇ。」
そう言って俺の隣に来て柵に腕を置く。
軽薄そうな男だ。きっとこんな状況じゃなくても空気の読めない人間なんだろう。
「ここは綺麗な場所だ。君の場所かい?」
「いや、違う。」
別に綺麗じゃないし。
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