短編

□EVERYBODY HAS THE DEVIL ON INSIDEF
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「おう!どこに目ぇつけてんだよ!?」
「ひっ…!」
見れば先ほどまで前方に歩いていた不良と思しき男二人が純子さんの前に立ちふさがっている。二人ともアロハシャツにジーパンとほぼ同じ恰好。茶髪と金髪で両方とも髪を立たせてガチガチに固めてる。
そして低い声で叫んだ。
見ようによっては珍妙とも言える表情で顔を近付けてくる。
「申し訳ありません。」
笹雲さんが間に割って入った。
笹雲さんは、正面から男を見据えている。
「しかしながら私たちはあなた方が通れる様に移動し、道を空けました。あなた方にも非はあるはずです。」
その通りだ。僕が移動して、それにみんなついてきてくれた。もし十分なスペースが無かったなら、山田くんが僕らの後ろに移動していたはず。
ぶつかった瞬間は見ていなかったけど、よっぽど無茶しないとぶつかりようが無い。
「ヒってなんだよ!?」
茶髪が大声で言う。
「えっと…?」
まさか言葉が通じないとは。いや、言葉を知らないとは。
たぶん、笹雲さんも驚きのあまり答えられないのだろう。
一度怯んだように見えたが直ぐに持ち直す。精悍な表情で再度相手に向き合う。
「えっと、私たちが一方的に悪くはないと思います。なので勘弁してもらえないでしょうか。」
さすが笹雲さん。ものすごく分かりやすく言った。
「あぁん!?ごたく並べてんじゃねぇぞぉ!」
金髪が言う。
いや、言葉が通じないのかな。
顔を無理矢理歪ませて、歪ませてるように見える顔で凄みを効かせている。
その醜悪な顔が笹雲さんの顔に近付くのは酷く不快だ。
「あんまなめてっと手ぇ出るぞ!あぁッ!!」
「待てよ大ちゃん、この女なかなかべっぴんさんじゃねぇか。」
茶髪が金髪、大ちゃんを制した。
というか、べっぴんさんて初めて生で聞いた。
「さすが元ちゃん。めざといな。」
「おぉ、まかしとけ。」
金髪の大ちゃん。茶髪の元ちゃん。
急に会話が不透明になった。何かを企んでるようだけど。
「おい、ぶつかったことは許してやるよ。そのかわり、ねえちゃんちょっと俺らに付き合えよ。」
「お断りします。」
ピシャリ、と言い切る笹雲さん。
「先ほども言いましたが私たちが一方的に悪くありません。そこに見返り求めるのは筋違いです。私たちは謝りました。これ以上できることは何一つとしてありません。」
あぁ、多分だめだな。
「てんみぇ〜っ!いい加減にしろコラァッ!!」
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