短編

□EVERYBODY HAS THE DEVIL ON INSIDEE
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言い忘れていたけど、ここは汐入という街。僕達が通っている学校の最寄り駅から五駅上ったところにある。縦須賀中央ほど拓けていないが大型複合店が有り、どぶ板通りを抜けると縦須賀中央に着く。その為人通りが多い。映画館は複合店に入っている。
服屋は山田くんチョイス。同じく複合店内の行きつけらしい。
今、その服屋の前にいる。いるんだが…足が重い。
別に奇抜な商品を扱ってる訳ではないし、入りづらい雰囲気が有る訳でもない。むしろ小音で音楽を流していて居心地は良いかもしれない。
ただ、これからの展開を考えると気が重い。よって足が重い。
身に付けたことのないものを身に付けるというのは勇気が要るものだ。着こなせるか、堂々としていられるか。心配だ。
実は恥ずかしい格好、調子に乗った格好をしているのはではないかと疑ってしまう。
山田くんと笹雲さんなら間違いは無いのだろうけど、僕が受け入れられるかが問題だ。
「霧生くん、入ろう。」
店の入り口で足を止めていると笹雲さんに促された。まぁ、休日だし他のお客さんの邪魔になるよね。
「これなんか、良いんじゃないかな。」
と、山田くんは新作の棚の裏に飾ってあるマネキンを示した。
マネキンの前にファッション誌が置いてあり、大きめの文字が書いてある。
『熱い男のワイルド勝負!この夏はこれだ!!〜the hottest〜』真っ赤な力強い字だ。そしてコーディネートも熱い。
黒いブーツ。黒の革のズボン。そして、素肌に真っ赤な革ジャン。ちょっと腕まくり。
「ちょ…。」
「霧生くん、似合うかもね!」
「こーゆー男らしい格好、いけるよ!」
「……マジでぇ。」
あ、思わずあんまり使わない言葉使っちゃった。この二人は何を考えているんだろうか。
かっこいいのかこれ?ファッション誌に載るくらいだからかっこいいんだろうけど。でもこのマネキンは筋肉隆々だ。僕の貧弱な体でこれをやったら犯罪になるかもしれない。いや、もしかしたらこんな格好をすればこんな体になれるのだろうか。ひょっとしてこの二人は僕の体のことまで考えてくれているのかもしれない。
我がクラスの優等生二人が手を組んで考えたことにきっと間違いは無く、僕は信じることで正しい道を歩める。
「かわいそうだよ。」
純子さんが言った。
「は?」
「こんな格好、犯罪だよ。」
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