短編

□下を向いて歩いていても
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「やる気が無いなら帰れ。」


「そんなにつまんないんだったら来なくて良かったのに。」


「ねぇ、あなたといても私楽しくない。」





うまくいかない。
うまくいかない。
うまくいかねぇんだよ。
あぁ、もう!何もうまくいかねぇよっ!!


俺なりに一生懸命やってるのに、やる気が無いと言われる。
楽しみにしていたはずの遊びなのに、気分が乗らない。
気を遣っているのに、一切伝わらない。
うまくいかない。
何をやってもうまくいかない。
いつからこうなったんだ。
昔は仕事にやる気があったし友達といると楽しかったし彼女ともずっと仲良しだった。
それなのに、今はそれがない。
それが、苦しい。
こんなに苦しいなら、無くても良いと思ってしまう。

うなだれながら歩く雨上がりの街。下を向いていると幾つも水溜まりが過ぎていく。
水溜まりには曇り空が映っていて、また雨が降り出しそうだ。
今日は休日だった。彼女とデートだった。
しかし、どうにもうまくいかないから中断した。
嫌われたかもしれない。ふられるかもしれない。
別に、構わない。
どうでも良くなってきた。
こんな風に下を向いて歩いていたら、良いことなんて無いと人は言うかもしれない。
でも、真っ直ぐ前を見て走っていたって良いことなんて少なかった。今は悪い方が多い。
どちらにせよ良いことが無いなら、楽な姿勢でいた方がましだ。
猫背になって下を向いている。
下を向いて歩いている。
歩いているから前に進む。。
歩いてはいるけど、前に進んでる気はしない。
いつからこうなったんだ。
いや、始めからここに向かっていたのかもしれない。始めから段々悪くなる方に向かっていたのかもしれない。
道を間違えたのか、努力が足りなかったのか。
俺が悪いのか、周りが悪いのか。何にしたって、あまりにもゆっくりと悪化していったから何の対処も出来ずにここまで来てしまった。
「はぁ……。」
どうすれば良いのか考えるのもめんどくさくなった。
今まで何も考えなかった訳じゃない。悪い方向に行っていると気付くのは遅かったけど、一応は何とかしようとした。
けど、何れも此れもが的外れだったようだ。
要するに何もうまくいかない。
結果が出ないなら無駄だったとしか思えない。
だったらもう、何もしなくていいか……。
立ち止まる。
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