読物

□退魔師列伝 魔刃朱殺 第六話B
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人混みを掻き分けながら、夜の街に飛び込んだ。
行き交う人と人との間をすり抜け、満足に進むことが許されなくても前進を続けた。
人々の喧騒と熱い空気に耐えながら眼を凝らして見知った顔を探す。
「何処に行ったんだ…。」
見つからない。これだけの人間がいる中、探しあてるというのは無理があるのか。
迷宮の中に人が溢れ返り、その中で思い人を探す。そんな状況。大きな試練や罠は無いが迷宮の広さと人の多さが俺を惑わせる。
迷宮とはすなわち、
「祭り会場ではぐれるなんて…。」
黒船祭り会場。
栗浜で一番大きな祭り。海岸沿いの道を中心に出店が立ち並ぶ。二十時からの花火を楽しみにしている人が多く、その時間まで人は増え続ける。
思い人とかじゃないけど、とりあえず合流しないといけない。しかも四人。めんどくさいと思いつつも、一人で祭りを回ってもつまらないので探す。
さっきメールしようとしたら送れなかった。他にも同じような状況の人が多くいるようだ。
「迷子センターに呼び出してもらうか…?」
見つからない。
なんでこんな風になったんだっけ…。
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