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□退魔師列伝 魔刃朱殺 第五話E
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「グゥゥゥゥ…」
ケモノの唸り声を聞いて、軌鋼は一歩退いてしまった。
そして疑問を持った。
話しには聞いていたキマイラの能力。実際に目の当たりにして驚きはあったものの脅威はまるで感じなかった。それだけ丈夫さに自信があった。実際に戦って圧倒的な強さを見せ付けることで自分は間違ってなかったと確信した。
だと言うのに、だ。
軌鋼は一歩退いた。
それがどのような衝動からだったのか、一瞬よぎった感情を否定したかった。
軌鋼が一歩退いた理由。それは絶望的な恐怖だった。
真実、軌鋼は否定した。自分が圧倒しているのが事実だったから恐怖する要素はない。
「ヘッ!ハッタリだけは大したもんだな!」
「グゥゥゥルルル…」
軌鋼の前にいる金色の獣毛に覆われた腕を持つ少年に声は届いていなかった。体内からわき上がるケモノ達の声が聴覚を埋め尽くしていたからである。
「ガァァッ!」
見てとれるほどの速さで少年の下半身の筋肉が肥大していく。
とうとうズボンが破れた。
中から現れたのは黒い山羊の下半身に狼の尾だった。
「ほう…。やっと本性を現したか。」
みるみるうちに変形していく体。
「……ぐぅぅ…。」
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