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□退魔師列伝 魔刃朱殺 第五話D
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ブブ ブ
木から飛び降りてきた魔は、昆虫の様な姿だった。
緑色の硬皮に大きな眼。触角と薄い羽。しかし、昆虫の特徴は六本の足である。この魔にある足は二本だけ。その昆虫としての欠陥を補完するかのように6枚の羽が存在を主張していた。
ブブブ ブブ
その羽は細かい振動を繰り返している。二本の足で立つというよりも、六枚の羽で平衡を保っていると言った方が正しいようだ。
「外れって何だ?」
「…独り言だ。」
「まぁ、いいか。」
 ブブ ブブブブ ブブブ
少しずつ羽音が大きくなっていく。
既に刃化していたナイフを取り出す。
「好戦的だな。」
「他にすることもないだろ。」
「そうだな。」
 ブゥゥゥゥゥゥゥゥン
耳障りだった羽音が、一つの音に統一された。
「速い…!!」
高速で迫ってきた緑色の魔。なんとか横へ飛び、避けることができた。
「避けたか…。」
すれ違い様に肩が少し斬られていた。
「その羽…。それがお前の武器か。」
「ご名答。やはり名前を聞いておくか。私は緑須(リョクス)」
「刃内寥(ジンナイ・リョウ)だ。」
あの羽は高速で振動する刃のようだ。突進とともにすれ違い、その時に斬り伏せる。そういう武器らしい。
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