読物

□退魔師列伝 魔刃朱殺 第五話B
1ページ/10ページ


「それは…俺の父を殺されたからだ……。」
父を殺された。そう言ってから朱に染まり始めた空を見上げ、ぽつりぽつりと溢すように語り始めた。
道場の帰り道に両儀の瞳の少年とすれ違ったこと。家には血塗れの父がいたこと。父が最期の言葉を遺したこと。そして決別をしたこと。
途切れ途切れに、しかしはっきりと。淡々と、しかしどこかに悲しみを誘うように。重みのある言葉を紡いでいった。
「………。」
返事がだせない。
目の前で、自分の腕の中で肉親が亡くなるというのはどんな気分だろうか。
俺は育ての親が事故で死んでしまった。それがとてもとても哀しかった。今までの人生を一緒に過ごしてきた人を亡くすのは辛くてたまらないものだ。
だが、それに犯人がいるとしたら俺はどうする…?
真っ先に思い浮かぶのは、復讐。
そんなことをした人間を許せる訳がない。許して良い訳がない。
「なぁ、もし双形が犯人だったらどうするんだ?」
「……。分からない。でも、許せるものじゃない。」
やっぱり。なら選択肢は絞られる。
「だから、俺は…」

許せないなら何をするか?
何が最良なのか?
それは…

「一発ぶん殴るッ!!」
「…は?」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ