読物

□退魔師列伝 魔刃朱殺 第四話@
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「よう。調子はどうだ?」
病室に入り、冬人に訊く。
「別に。変わんねぇよ。」
冬人は読んでいた本を伏せ、顔を上げる。気怠そうに上半身を起した。
「退屈で息が詰まりそうだよ。」
「だろうなぁ。その状態じゃ。」
持ってきた和菓子をベッドの脇に置いて椅子に座る。
「それにしてもだせぇよな?バイクでコケるなんて。」
「ウルセェよ!」
冬人は三日ほど前にバイクで夜の道を走っていたら急に猫が飛び出してきて、それをよけたらすっころんだ。それで骨折をしてしまい入院している。
それから毎日、秋人とからかいついでに見舞いに来ている。
「今日は秋人は来ないのか?」
「なんか用事があるから遅れて来るってよ。」
「そっか。まぁ、アイツがいるとやかましいからな。」
そんなやかましさが楽しかったりするのは解っているが、口に出して言わない。お互い解っている事だから。
「あっ、紅刃風糸の新刊出てたよ。」
今二人ではまっている漫画だ。
「マジで!?見して!」
「悪ぃ、持ってくんの忘れた。」
「ぬか喜びかよ…。」
はぁ、と溜息を吐きながら窓の方を見る。
「……。」
「そんな落込むなよ。」
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