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□退魔師列伝 魔刃朱殺 第六話C
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そんな、実感。気付けなかった形が見えた気がする。
「捕れた。」
「あ、すごい。」
うわ、見てなかった。何やってんだ俺。
「えへへ、このまま寥クンの分まで捕ってあげるね。」
「頼もしいね。」
「任せてよ!」
そう言って、腕捲りした拍子に何故か紙を破いていた。
「あ………。」
「え?」
「紙、破けてる……。」
「……ッ!?あぁ〜ッ!!」
叫ぶ美作サン。
「ハイ…、残念〜…。」
どことなく店のオバサンも気まずそう。
「なんで?どうして?」
目に涙を溜めながら狼狽えている。
「まぁ良いじゃん。一匹捕れたんだから。」
「…刃内クンの分も捕りたかったから。」
「それはありがたいけど、どうせうちに水槽無いしさ。」
「…そうだけど……。」
優しい人だなぁ。ホントに尊敬できる。
「じゃあその金魚に名前をつけてよ。そうすれば俺も忘れないから、飼ってるような気分になれる。」
「ホント?」
若干無理があったかな。でもこれだけ言えば絶対忘れないだろう。
「ホント。」
「じゃあ今考える!ちょっと待ってて。」
直ぐに真剣な表情になる。こういう切り替えの早さとか、素直な感情表現とかは俺にないもの。だから尊敬できるのか。
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