短編

□EVERYBODY HAS THE DEVIL ON INSIDEC
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声がする方向を見ると三人がこちらに向かって歩いてくる。
笹雲さんがいて、ほんの少し距離を置いて山田くんとその彼女が手を繋いでる。
あぁもうそこの二人だけにして僕らは解散した方が良いんじゃないか。とか思いつつ手を振る。
笹雲さんはミニスカートに膝上までの靴下という若い格好。山田くんは細みのブルージーンズがよく似合ってる。帽子とか被ってオシャレ。いや、オシャレとか分からないけど。彼女さんはワンピースにズボンを履いている。大人しそうな印象。
「おはよう、霧生くん。」
「おはよう。」
さすがに二人とも立派な笑顔だ。とても僕には真似出来ない。
「お、おはよう。」
「彼女の純子。クラスメートの霧生くん。」
「よ、よろしくです。」
「よろしく、お願いします。」
「二人っきりだとズンって呼んでるみたいよ。さっきうっかり言ってた。」
「ちょ!笹雲さん!」
やっぱりこの二人が会話を回していくのかな。純子さんはあまり喋らない人みたいだし。
なんて考えるのがダメなんだろうか。
「じゃ、そろそろ行こうか。霧生くん、ケータイどうする?」
「買おうと、思います。」
なんか、優等生の言う通りにすれば良いと思ってしまった。意思が無いなぁ、僕。
「うん、それなら最初にケータイ屋さんに行こう。」
「霧生くん、ケータイ買い替えるの?」
「いや、持ってないから買おうかと。」
「え?そーなの?そういえばアドレス聞く機会がなかったなぁ。」
やっぱりケータイを持ってるって当たり前のことなんだ。僕がケータイを持っているのを見てたらアドレスを聞いてくれたんだろうか。
「ねぇ、どこの会社のが良いとかある?」
「違いが分からない。」
「じゃあ私と同じで良い?その方が割引とかあるし絵文字も出来るし。」
「そうする。」
「開くタイプとスライドタイプがあるけど。」
「触ってみないと何とも言えない。」
「そっか。カメラとかこだわりある?」
「いや、使うかどうかも分からない。」
「そっか。」
なんだかんだ訊かれてるうちに店に着いた。色々な形のケータイが綺麗に陳列されてる。
この中から選ぶの、めんどくさいな…。
「さぁ、どれにする?」
「…………。」
いや、どれって…。
「あ、これ俺が使ってるやつの新しいのだ。」
「ホントだ。こっちの、かわいいな。次はこれにしようかな。」
どこを見て何を言ってるのか、山田くんと純子さん。
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