秋色の空(恋愛編)

□小さな訪問者
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再び夏美の部屋。

モアに借りた辞書は本と言っても地球の物とは違い
目の前に立体映像が現れるものだ。

ケロン文字を銀河標準文字に変換しさらにアンゴル文字や日本語に変換する物らしく
さまざまな文字に対応していた。

「へえー、便利ね」
感心しながら辞書を読む夏美
その机の上には先程の封筒が置かれていた。

結局、モアには返しそびれたのだ。
その理由はギロロの名が書かれている事もだが
封筒の裏にはハートマークの可愛いシールが貼られていたからだ。

いけないと思いながらも夏美は封筒から出てしまっていた手紙を見てしまう。
そしてモアの辞書で文字を調べてみた。
「癖があるって言うのかしら、分かりにくい字ね」
独特な文字で何の文字か分かりにくかったが調べていくと其処には…

「な、なによ…これ」
思わず夏美は声をあげてしまった。
その手紙の内容は…

『ギロロ大好き』
『なつみより大好き』
『結婚してギロロ』

「ラ、ラブレター?」
「ラブレターよね、これ」

夏美は驚き、目を丸くしている。

「開封してあるって事は…あいつ読んだのよね」
「モアちゃんはかたずけるって言ってたし…」
「ギロロも別に変ったところ無かったし…」
「し、心配する必要な、無いわよね…」

夏美は机に置いてあったジュースを飲もうとして
思いっきりこぼしてしまった。


雨もやみ、ギロロはたき火の前に腰をかけていた。
すっかり雲の切れた空を見て楽しそうに笑っていた。

「ギロロ…」
後ろから夏美が声をかけてきた。

ギロロは振り返り
「お、おお、夏美か」
「さ、先程はなかなか有意義だったな」
「辞書は借りられたのか?」
と続けて返事をした。

「うん…」
「そ、それでね…あのね…」

ギロロはいつもと違う歯切れの悪い口調の夏美が気になった。
「夏美、どうした?何があった?」
心配して尋ねると
「う、うん、何でもないの…じゃあね」

夏美はそそくさと家の中に入ってしまった。
「夏美?」
ギロロはそんな夏美を心配そうに見ていた。

リビングに戻った夏美はソファに座り俯いて首を振っていた。
『言えない、言えるわけない』
『それに、人の手紙を勝手に見たなんて言ったら…』
『きっとギロロは私の事を軽蔑するわ…』

『手紙の内容や相手の事』
『すごく心配だけど』
『ギロロに嫌われたくない…』

「どうしてあんな手紙を読んでしまったんだろう…」
夏美はソファに寄りかかり
猛烈に後悔していた。
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