夏色の海(恋愛前編)

□「ベストショット」
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庭から玄関に戻ってきた夏美。

今度は写真を撮らずに戻ってきた事を後悔した。

「やっぱり撮ればよかったかも・・・でも」

そこで夏美はこっそり家の陰からギロロを撮影しようと思った。

「少し小さく写るけどギロロはギロロだし・・・」

この時点でギロロを撮る事に対して自分の中に何も疑問はないらしい。

「ピッ、ピッ、ピッ」

続けて3枚ほど撮った。
撮影した写真を確認してみると、

「あれ?写ってない」
「庭は写っているのに?」

横にあった植木鉢の花を撮影すると
「綺麗に写ってる!何でギロロは写らなかったのかしら」

疑問に首をかしげながらリビングに戻ると
リビングには冬樹とボケガエルが居た。

「おー!夏美殿、我輩のお小遣いで手に入れた
携帯の調子はどうでありますか?」

いやみたっぷりに聞いてきた、あたしはムッとして
「元はと言えばあんたのせいでしょ」
と答え、怒りをあらわにするとボケガエルは
「そ、そうでありました、申し訳なかったであります」
と、冬樹の陰に隠れた。

そんなやり取りに痺れを切らした冬樹がボケガエルに声をかけた。
「ねえ、軍曹そんな事より話の続きを聞かせてよ」
「そうでありましたな、冬樹殿」

話の続きとやらをボケガエルにねだっている、
どんな話をしてたのかしら。

「アンチバリアがあるとカメラにも写らないんだね」

え?・・アンチバリア?・・写らない?

「その通りであります」
「アンチバリアはいわゆる一つの『光学迷彩』なのでありますよ」
「光の屈折を利用してその物が無い様に見せているのであります」

「だからレーダーに写る事はあっても肉眼やカメラには写らないのであります」
「ただし、日向家の皆さんや関係者の方は別であります」

・・・・・そうか、カメラに写らないんだ・・・・・

「それでギロロも写らなかったのね・・・」

あっ!つい声に出てしまった。

「は・・・?、ギロ・ロでありますか?」

冬樹とボケガエルが目を丸くしてあたしを見ている。

「な、なんでもないわよ」

あたしは慌てて自分の部屋に戻っていった。

部屋に戻ったあたしは何故か酷くがっかりした、

「アンチバリア解除しろなんて、言えないよね・・・」
「写真は諦めよう・・・」

最初はなんとなく、特別な意味も無かった筈なのに
こうなるとなんだかとても残念な気がする。

その時だった、
夏美の窓の横を赤い物が横切っていった。

慌ててベランダの窓を開けると飛行ユニットで
空高く昇っていくギロロの姿があった。
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