夢色の花1

□シミュレーション
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ギロロと夏美は森の中を歩いていた。
ギロロは装備で身を固め夏美はパワードスーツ姿だ。
「ねえ、ギロロ…もう大分歩いたんじゃない?」
「まだ一時間も経っていない、だらしないぞ夏美」
「失礼ね…」
夏美は汗を拭うと木の隙間から空を見た。


事の始まりは日向家のリビング
『YOU・LOST』
「やだ〜、また負けた」
夏美と冬樹はリビングでTVゲームをしていた。
格闘ゲームやシューティングゲーム等は夏美の圧勝だったが
戦略シミュレーションゲームになったとたんに形勢が逆転した。

「姉ちゃん分かり易いから」
冬樹に笑ってそう言われるから余計に気分が悪い。
夏美は不機嫌オーラを発しながら
「もうや〜めたっと」
と、言ってリビングを出た。

階段を上がろうとした夏美にギロロが声をかけた。
「夏美、ちょっといいか?」
「ギロロ…どうしたの?」
何時になく真剣な表情のギロロに夏美は少し驚いた。
「いいからちょっと来い」
「なによ、ちょっと…引っ張らないで」
半ば強引にギロロは夏美を地下基地に連れて行った。

「此処は?」
夏美が連れてこられた所は広いドーム状のホールの様な所
「シミュレーションルームだ」
そう言うとギロロはリモコンを取り出しスイッチを入れた。
その瞬間周りが深い木々に覆われる、二人は森の中にいた。

二人の姿も戦闘用の装備になっている、夏美はパワードスーツ姿だ。
「何が始まるの?」
「現在我々は敵性宇宙人と交戦中…」
「そういう状況設定のシミュレーションだ」

「また…シミュレーション?…あたし飽きちゃった」
「…弱いから、負けるから嫌なのだろう?」
ギロロにニヤリと笑われて
「なによ、失礼ねえ…確かに弱いわよ…」
と、夏美は頬を膨らませた。

「見ろ、夏美」
夏美の前にスクリーンが現れる、スクリーンにはマップが写し出された。
「今俺達がいるのは此処だ」
「この3つ先の山の向こうに敵の本隊がある」
「我々に用意されているのは兵士100名、陸上兵器5、戦闘機3、補給部隊1…」
「そして俺たちだ、どう戦う?」

「当然地上兵器に左右から攻撃させてあたし達が正面突破よ」
「戦闘機はあたし達の護衛ね」
夏美はニヤリと笑っていった。
「…そうか」
少しの沈黙の後ギロロは頷いた。


…そして現在に至るのである。
正面強行突破のつもりであったが地形効果などにより侵攻は容易では無かった。
それでも森を抜け目の前に敵本隊の姿を見つけた。
「さあ、行くわよ!」
夏美が叫ぶが
「ダメだな…」
と、ギロロが呟いた。

「!!」
気がつくと後方にも敵の姿があり夏美達は完全に取り囲まれていた
周りの敵が一斉に攻撃を仕掛ける…
するとものすごい勢いでギロロが夏美の周りを回りだし夏美への攻撃をカバーした。
…が、防御しきれずにギロロは敵の攻撃をまともに受けてしまった。
「ギロロ!」
流れ弾が夏美の腕にも当たる
「痛い!」
一瞬目を閉じた夏美が再び目を開けると周りは元のホールに戻っていた。
「ミッション・オーバー」
冷たい機械の声だけが響いていた。
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