夢色の花1

□あたしの居場所…
1ページ/3ページ

今回は「秋色の空」の最初の方…
二人がまだお付き合いを始めたばかりの頃のお話です。


学校から帰宅した夏美は鼻歌交じりで
ギロロのテントに向っていた。

夏美とギロロは中学を卒業した時
思わずお互いの気持ちを確かめあった。

今や二人は恋人同士…
いや、実際にはまだ付き合い始め
たばかりなので
そこまではいっていないのかもしれない。

今は帰宅後ギロロに学校での出来事を報告をする事が
夏美にとって日々の楽しみとなっている。

家の角を曲がって庭に顔を出すと
焚き火の横にいるであろうギロロに声をかけた。
「ギロロ!」
だが夏美の予想に反してそこにギロロの姿はなかった。

「テントの中にでもいるのかしら?」
夏美がテントに近づいた時だった。

「!!」
ギロロのテントの入り口からそれは健康的な太ももが一本…
ニョキッっとばかりに伸びてきたのである。
それはどう見ても人間の女性のものである。

「・・・・・・・・」
それを見た夏美は無言のまま建物の蔭へと隠れてしまった。
『な、なんなのよ…っていうか…あれ誰?』

夏美はそっとテントの様子を見ている。
やがてテントからはもう一本の脚が現れた。
『まさか…ギロロの奴…』
その健康的な二本の太ももを見て夏美はよからぬ想像をし、
機嫌はどんどん悪くなっていく。

その二本の脚の次に見えてきたのは…しっぽだった。
「へっ?」
やがて全身がテントの中から出て来た。

それは夏美も知っている娘…ネコちゃんであった。
ネコは当然猫である、人間ではない。
ただ、クルルの作った『ボクラハミンナイキテイルガン』
を使って時々人間の姿になっていることを夏美は知っている。

「ネコちゃんだったんだ…」
建物の蔭から出てきた夏美は改めてテントに近づいて行った。
そこへテントからギロロも出てきた。

「こら、おとなしくしてろ」
「だって退屈にゃ…」
ギロロがネコをテントに戻そうとするがネコは言う事を聞かない。

「そとはいい天気にゃ、もっとあそぼ、ギロロ」
逆に人間体になったネコはギロロを持ち上げると抱きしめた。
「・・・・・・・・」
それを見た夏美は無言で固まっていた。

テントの横で固まって立っている夏美の姿をネコが見つけた。
「あっ、夏美お帰りにゃ」
「おう夏美、無事帰還したか」
その声に夏美の存在をギロロも気がついて夏美を迎えた。

「・・・・・・・・」
夏美は無言で立っている。
「夏美、お帰り〜」
ネコはギロロを放すと夏美の所に駆け寄った。

「ネ、ネコちゃん…どうしたの?その格好…」
正気に戻った夏美がネコに尋ねた。
「ケロロのバカが銃を暴発させてな…」
「しょうがないから戻るまで俺の所に置いておくことにしたんだ」
ギロロが夏美に近づいて答えた。

「…ふ〜ん」
返事をしながら夏美はギロロを睨みつけている。
「どうした?夏美」
夏美の様子にギロロは首をかしげた。
「何でもないわよ」
夏美はぶっきらぼうな返事をした。

「なっつみ、なっつみ…」
ネコが夏美にじゃれている。
以前ネコは夏美に抗戦的であったが
ギロロに対する夏美の気持ちを知った時から
ネコは夏美の事が愛おしくなった。
それ以来ネコは夏美になつくようになったのだ。

「こら、ネコちゃんくすぐったいよ…」
ネコにじゃれつかれて夏美は笑っている。
夏美の機嫌も少し戻っていったようだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ