夢色の花1

□「ぎおお」
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ここは日向家地下室にあるケロロの部屋
ケロロ、ギロロそしてクルルの三人が真新しい銃を見ながら話をしていた。

「隊長に頼まれていた『ジンセイガニドアレバガン』の改良が済んだぜぇ」
クルルが仕上がったばかりの銃をケロロの手渡すと
「お〜、これは素晴らしい」
ケロロは嬉しそうに銃を受け取ると構えて見せた。

「いったい何を改良したんだ?」
ギロロの問いかけにクルルが答える。
「今までのタイプは若返っても時間が経てば元に戻っただろう…」
「今度の奴はよう、効果を解除しない限りそのまま効果が継続するんだぜ、すげえだろ?」

「…で、これは何か侵略に関係あるのか?」
「べっつに〜」
ケロロの言葉にギロロが顔を真っ赤にして怒鳴ろうとした時のことだった。


「こら〜、ボケガエル!また掃除当番サボったわね!!」
部屋の扉を勢いよく開けて夏美が入って来た。
「わっ、夏美殿!」
「早く掃除しなさい、さもなくば…」
「ご、ごめんなさいであります…わっ!」
びっくりして後ずさりした拍子にケロロは転んだ。
そのはずみで『ジンセイガニドアレバガン改』の引き金が引かれてしまった。

「きゃあぁぁぁぁぁ…」
夏美の悲鳴が聞こえたかと思うと夏美の姿は消えていた。
…いや、消えた訳では無かった。
銃の光線を浴びた夏美は小さな幼女の姿に戻ってしまっていた。

「夏美―――!」
ギロロが慌てて夏美の所に駆け寄ると床に広がる夏美の着ていた服のちょうど真ん中に
小さな女の子の姿があった。
「夏美なのか…」
以前にも何回か見た事のある小さな頃の夏美の姿。
「クルル、早く戻せ」
「無理だぜぇ」

「何故だ?」
「効果を解除する機械がまだ未完成だ、まだ2〜3日かかるぜぇ…」

「そんなにかかるのか?」
「そう殺気立つなよ、大至急作ってやるからよ」
クルルは地下基地に戻ろうとしたが足を止め、ギロロに告げた。

「先輩、今回のこの銃は改良型だ」
「効果の継続と共に記憶操作についても強化されているぜぇ」
「どういう事だ?」

「以前の奴は記憶操作しても基本的な部分はそのままだったから俺達に対する認識はあった」
「今回の奴は何時もの日向夏美の記憶はねえ、小さな頃の記憶はともかくその姿以降の記憶がない状態だ」

「消したのか?」
「そうじゃねえ…」
「本当に消す訳じゃあねえけど記憶の奥にしまい込んじまうのさ」
「元に戻った時も若返った時の事は覚えちゃいない」
「同じように記憶の奥にしまい込んじまうのさ」

「まあ、先輩の事も含めて覚えていない状態だから…」
「改めて初対面って訳だ…」
「急いで解除する機械を作ってやるからよう…」
「それまでせいぜい面倒見てやんな、くーっくっくっくっ…」
クルルは嫌みたっぷりに笑うと地下基地に消えていった。

「ケロロ、貴様…」
ギロロが睨みを利かせて振り向くとケロロは
「たしか前に子供になった時の服がある筈であります…」
「我輩探してくるでありますから…」
「ギロロ伍長、後よろしくであります」
そう言ってその場から逃げだしてしまった。


部屋には小さくなった夏美とギロロだけが取り残された。
「あ、あのなあ…なつ…」
ギロロが夏美の方に振り返った瞬間…
強烈なパンチがギロロを襲った。
小さな夏美が渾身の力を込めて放ったパンチがギロロにまともに命中した。
「ぐ、ぐあっ…な、夏美?」
「あんた、だえ?」
「わかった、あくのうちゅうじんね!」
「やっちゅけてやう―――!」
小さな夏美は脱げた何時もの夏美の服から飛び出すとギロロに飛びかかっていった。

「うわぁぁぁぁ、よ、よせ…夏美」
飛びかかってくる夏美の姿にギロロは大慌てだ。
殴りかかってくる夏美にも慌ててはいるが、それ以上に子供の姿とはいえ今の夏美は服を着ていない。

ギロロは失神しそうになる自分を堪えて夏美を抱えて止めると何時もの服で夏美の身体を覆い夏美の目を見て話しかけた。
「お、落ち着け夏美」
ギロロとまともに目があった夏美の顔が崩れていく。
「やだぁぁぁぁぁぁ、こあいよ―――――!」
普通に見ればギロロの顔は怖いと感じるのが普通であろう。

ギロロは大泣きする夏美を見て溜息をつくと夏美の頭を撫でながら
「大丈夫だ…怖くないからな…怖くない…」
と、優しく、優しく囁いた。
「ほんとお?」
「本当だ」

「あくのうちゅうじんじゃないのぉ?」
「そうではない」

「…ほんとお?」
「ああ…」

「なんであたちのなまえ、ちってうの?」
「なんでだろうな…」

「あたちあんたのなまえ、ちらないお…」
「じゃあ、覚えてくれ…」
「俺の名は『ギロロ』だ」

「…ぎ・お・お…?」
「そうだ…ギロロだ」

「ぎおお…うん、わかった、ぎおおね」
先程まで大泣きしていた夏美だったが涙を止めてギロロをじっと見つめている。
ギロロがめったにしない笑顔で微笑むと小さな夏美も少し落ち着いてきた様で笑顔を見せ始めた。
やがてケロロが夏美の服を持ってくるとギロロと小さな夏美は地上の日向家に戻っていった。
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