夢色の花1

□冬樹の侵略者観察日記
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冬樹がリビングの窓から外を見ると
庭先のテントに夏美が近づいていくのが見えた。

「ギロロ、ギロロ…」
姉ちゃんが伍長を呼んでいる。
「ねえ、どう思う?」
姉ちゃんが伍長に判断を求めている。
「もう、ギロロったら…」
ね、姉ちゃんが伍長に…甘えている?
「ギロロぉ、お願い」
ね、姉ちゃん?…

「あ〜、冬樹殿、うるさいでありますなあ」
「いったいどうしたのでありますか?」
冬樹のひとりごとにリビングでガンプラを作っていたケロロが声をかけた。
「ごめん、軍曹…だってさ…」
「最近の姉ちゃん、なんだか変わったなと思って」

「ほう、と言いますと?」
ケロロが身を乗り出して尋ねてきた。
「姉ちゃん普段はあんまり人に判断をゆだねたりしないんだ、何でも自分で決めるから…」
「ましてや甘えたり頼ったりすることも僕やママ以外の人にはまずしない」
「意地っ張りで頑張り屋だからね…」

ケロロは冬樹の話を聞いて頷いている。
「…で、最近はギロロにそんな態度をとっていると?」
「うん」
「あの二人、最近はお付き合いしているようであります」
「仲良しさんでよきかな、でありますよ」
「うん、まあね」
冬樹は微笑むとケロロのガンプラ作りを眺めていた…



そんなある日のこと
ケロロのへっぽこ侵略作戦はまたも失敗し
夏美のお仕置きを受けている。
今回はケロロのみがその作戦を実行しギロロは直接係わっていない。
にもかかわらずギロロもケロロと並んでお仕置きを受けている。

「なんで俺まで…」
ギロロのぼやきが聞こえる。
「ギロロ、何か言った?」
夏美の声にギロロは黙ってお仕置きを受け続けた。

「姉ちゃん、それはひどいよ」
見かねた冬樹が夏美に声をかけたが振り返った夏美の顔を見て黙ってしまった。
冬樹が黙ったのを確認すると夏美は再びケロロ達の方を向き
「反省が足らない様ね」
と言ってお仕置きを続けた。

それを後ろで見守る冬樹の横にいつのまにか623が立っていた。
「どうしたんだい?冬樹君」
「623さん」
冬樹は623に事の次第を教えた。
「ふ〜ん、で、伍長さんはとばっちりを受けているって訳ね」
「そうなんです、姉ちゃんひどいや」
「ど〜れ…なるほどね」
夏美の様子を見ていた623は納得した様に頷くと
笑って冬樹に尋ねた。
「夏美ちゃんの様子はいつものお仕置きと一緒かい?」
「えっ…う、うん、そういえば怒っているのは間違いなさそうなんだけど…」
「どちらかというと『拗ねている』って感じかな」
「姉ちゃん、ああいうときは理屈が通じないから…」

「なるほど『拗ねている』ねえ…」
「俺、夏美ちゃんの拗ねている顔って初めて見たよ」

「ふ〜ん」
623はしばらく夏美の様子を眺めていたが
振り返ると冬樹に向かって微笑んだ。
「冬樹君、案外とばっちり受けているのは逆かもしれないよ」
「えっ?軍曹の方って事?」
「多分ね」

「冬樹君はさあ、侵略者の観察結果を記録してるんだろ?」
「は、はい…」
「夏美ちゃんと伍長さんの様子をよく見ていてごらん」
「もしかしたら別口の侵略が見られるかもよ」
「別口の侵略って?」
「それは見てのお楽しみ」

623はそう言うと紙飛行機を実体化ペンで書いて
空に飛んで行ってしまった。
「別口の侵略って何だろう?」
空を見ている冬樹の所に夏美がやって来た。
「623さん来てたの?来たなら教えてよね!」
「い、いや、お取り込み中って事で…」
「もう、せっかく623さん来たって言うのに…」
「ギロロ…あんたのせいだからね…」
「お、俺のせいか?」
夏美はお仕置きが終ってぐったりしているギロロを連れて部屋に戻っていった。
「二人の様子?」
首を傾げながら冬樹も家の中に戻っていった。


「よう、日向冬樹」
冬樹がお手洗いに寄ってからリビングに戻ると
珍しく日向家のリビングにいたクルルが冬樹に声をかけた。
「あれ、曹長珍しいね、どうしたの?」
「別に何でもねえよ、それより日向夏美がさっきお前さんを探していたぜぇ」
「何か見せたいものがあるんだとよ」
「見せたいもの?」
「さあな、俺はおまえにちゃんと伝えたぜぇ」
そう言ってクルルはリビングから出ていった。
「さっきまで一緒に庭にいたのに…なんだろう?」
冬樹は階段を上がっていった。
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