秋色の空(恋愛編)

□「提督」
1ページ/6ページ

秋の運転する乗用車はいくつかの峠を越えて秋の実家へと向かっていた。
8月のお盆の休暇を秋奈おばあちゃんの所ですごす為である。

「どうせなら小隊の空中輸送ドックを使用すれば良いのであります」
「渋滞だって関係ないのでありますよ」
と、言うケロロの提案は秋によって却下された。
秋は自分で車を運転したかったのである。

車内には運転席には秋、助手席には冬樹、後席には夏美が乗車している。
そして夏美の横にはギロロ、ケロロ、タママの3人が並んで乗車していた。

何時もの様にトランクに乗ろうとしていたケロロ達に秋が
「隠れて乗る訳じゃないんだから、こっちにいらっしゃいよ」
と後席に乗るように勧めたのだ、夏美も
「じゃあ、あたしは後ろに乗るわね」
と、言いだしてギロロの横に席をとった。

「クルちゃんやドロちゃんもくれば良かったのに」
秋が残念そうに言うとケロロが
「あー、クルル曹長は『かったるいからパス!』だそうであります」
「ドロロは小雪殿と山ごもりで修行だそうであります」
と、すまなさそうに答えた。
「大変なのね」
「まったくであります」
ケロロは腕を組んで頷いた。

地球人3人+ケロン人3人の車内はとても賑やかく
長い道のりもあっという間の様な気がした。


やがて車は実家の前に到着した。

「おばあちゃ〜ん」
車から降りた夏美と冬樹は家の前にいた秋奈を呼んだ。
秋奈は振り返ると嬉しそうに微笑んで二人を迎えた。
「おやまあ、早かったねえ」
「いらっしゃい、夏美ちゃん、冬くん」

「ただいま、母さん」
「お帰り秋」

秋奈は秋の後ろに立っているケロロ達を見て
「おやおや今年も来たんだね、いらっしゃい」
と、優しく微笑んだ。
「提督殿、今年もお世話になるのであります」
ケロロ達は敬礼した。

「よしとくれよ、あたしは提督なんかじゃないよ…秋奈おばあちゃんで結構よ」
「とんでもないのであります「提督殿」と呼ばせていただくのであります」
ケロロ達は身を正し再敬礼した。

車から荷物を家の中に移動させると
「あたしは夕飯の食材を採ってくるけどあんた達はゆっくりしていなさい」

秋奈の言葉に冬樹は
「軍曹あっちに行こう、いい所があるんだ」
と早速ケロロを誘って出かけて行ってしまった。

「タマちゃんはどうするの?」
秋が尋ねるとタママは
「より強い奴との出会いが僕を待っているです…」
と言って林の中に消えて行ってしまった。

「ギロロ」
夏美の声にギロロが振り返るといつの間にか
ピンクのタンクトップにショートパンツ姿に着換えた夏美が立っている。
「あたし達も出かけようよ、川に行きたいな」
「ふっ…川か、よかろう」
「じゃあママ、おばあちゃん行ってきま〜す」
夏美達は近くの川に向かって歩き出した。

夏美とギロロを送り出した秋奈は野菜を入れる籠を担ぐと
「さて、あたしも行くとするかね…」
と言った後、横にいた秋に

「秋…手紙の件なんだけどね…」
「帰ってきたら詳しく話を聞かせておくれ」
そう言うと小さく頷く秋を残して畑の方角に消えていった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ