秋色の空(恋愛編)

□小さな訪問者
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「え…っと、これでいいの?」
「そうだ」

此処は夏美の部屋。
せっかくの日曜日であったが朝から雨が降っていた。

テントの中で銃を磨いていたギロロは
突然訪問してきた夏美に

「教えてほしい事があるのよ」
と言われて夏美の部屋についてきたのだった。

「これが「夏美」…だ」
「で、これがギロロね」

夏美が教えてほしいと言ったのはケロン星の文字だったのだ。
「またどうして急にケロン文字など知りたくなったのだ?」
「いいじゃない、知りたいんだから」
不思議そうな顔をするギロロに夏美は笑って答える。
一生懸命な夏美を見てギロロも精一杯付き合う事にした。

「ふーん、なかなか面白い文字だけど」
「ルール的には地球の文字とあまり変わらないかも」

「お前達の文字の方が難しいぞ」
「あ、日本語は特にね」

「これでいいのか?」
ギロロは代わりに夏美から日本の文字を教わっていた。
ギロロが書いた文字は「夏美」「ギロロ」

「そうよ、うまいじゃない」
「そうか」
ギロロもまんざらでもないようだった。

書いている間に夏美は面白くなってきていた。
「何だか面白くなってきたわ」
「ギロロ、何か勉強になる資料無い?」

ギロロは夏美のおねだりには弱いのだが
あいにくその手の本は手元になかった。
「俺の所には無いが…そうだ、ケロロの所になら」
「辞書か何かあるだろう。」

「じゃあ、後で行ってみるわ」
夏美はそう答えるとそれからしばらくの間
ギロロと文字のおけいこを楽しんだ。


「ボケガエルー、何所にいるのよー」
夏美はケロロを探して広い基地内を歩いていた。

すると…
前方の通路をモアが歩いている。
「あ、モアちゃん」
モアが夏美の声に気づき
「夏美さん、どうなさったのですか?」
と、立ち止まって尋ねてきた。

「じつはね…」
夏美が説明をするとモアは
「おじさまは曹長さんと打ち合わせ中ですが…」
「本ならあたし持ってます」
「あたしも前にケロン文字、勉強しましたから」
と自分が辞書を持っている事を夏美に伝えた。

「え、本当?お願い、貸してもらえないかしら、モアちゃん」
夏美はモアに手を合わせてお願いした。
「いいですよ」
モアは快く承諾した。

「でもその前にこれ、かたずけてきますね…っていうかお仕事優先?」
と言ってモアは持っていた段ボールをかたずけに行った。
「うん、ありがとう。じゃあリビングで待ってるわ」

モアが立ち去る時モアの持っていた箱から何かが落ちた。
「あ、ちょっとモアちゃん、落ちたわよ」

夏美が声をかけた時にはもうモアの姿は見当たらなかった。
夏美は落ちた物を手に取った。

「なに、これ、手紙?」
「開いてる、読んだ後なのかしら」
落ちた拍子に封筒の中の手紙が出てしまっている。
「人の手紙見たらいけないわよね」
「…っていうか読めないし」

と、何気なく封筒を見たら見覚えのある文字が
「ギ・・ロ・ロ・?」
「ギロロ、ギロロに来た手紙なのかしら?」

夏美はその手紙が気になって仕方がなかった。
「だ、だめよ、人のプライバシーなんだから…」
などと言いつつ夏美はしっかり手紙を握りしめていた。

「あ、後でモアちゃんにわ、渡さなきゃ」
夏美は地下基地から出ていった。
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