秋色の空(恋愛編)

□一輪の花
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「もう!ギロロなんか知らない!ばか!」

夏美の怒鳴る声にリビングでおやつを食べていた冬樹とケロロは目を丸くして天井を眺めていた。
「何事でありますか?」
「さあ?」

少し間をおいてから憤慨した様なギロロがリビングに入って来た。
「あ…ギロロく…伍長」
「なんだ!」
「な、何でもないであります…」
ギロロはケロロを睨みつけると不機嫌そうに庭に出ていった。

心配した冬樹が夏美の部屋をのぞくと新しいビキニの水着を着た夏美がへたり込んでいる。

「姉ちゃん…?」
「何でもないわよ…ドア閉めてって」
あきらかに泣いている声だった。
「うん、わかった」
冬樹は何も聞かずに部屋のドアを閉めてリビングに戻っていった。

事の始まりは夏美がギロロに新しく購入した水着を見せようと自分の部屋に呼んだことから始まった。

中学生の時に起きたある出来事以来、夏美は新しい服などを購入すると
ギロロに着たところを見せて感想を聞こうとするのである
ギロロが気の利いた言葉を言える筈もないのだが何故かそれで夏美は納得するのである。

今回も同じ様にギロロに水着を見せようとしたのである。

「ねえ、新しい水着なんだけど…どう?」
「ど、どうって…随分と…その…刺激的だな」
ギロロは真っ赤になっている

「…そんなでも無いでしょ?普通だと思うけど」
夏美はギロロの前でくるりと回ってみせる。
「これ着て夏休みになったらさつき達と海に行こうかと思って」
ギロロの顔色が変わる
「お前達だけでか?」
「うん」
夏美は鏡を見ながらポーズをとり上機嫌だ。

「ダメだ!」
「えっ?」
急にギロロが険しい顔をして強い口調で話し始めた。
「そのような格好で海になど行ってはずかしいとは思わないのか?」

「だって海に行くのよ?水着なのは当たり前でしょ?」
「あんただってあたし達と海に何回も行ってるじゃない…」

「急にそんな事言い出すなんておかしいわよ」
夏美は急に文句を言いだしたギロロの気持ちが分からなかった

一生懸命反論するがギロロの態度は変わらない
「俺のいない海にそのような格好で行って誰に見せる気なのだ?」
「…誰に見せるって…」
夏美は俯いて震えている
「あんた、あたしの事そう思ってたんだ…」
「最低ね…」

「ギロロのばか!もう知らない!」
夏美は目を涙でいっぱいにして手に持っていたラッシュガードをギロロに投げつけた。
ギロロは無言で夏美の部屋を後にした。

…それから一時間程経とうとしている。
夏美は一人公園のベンチに座っていた。

公園の前を行くカップルを見つめながら
「ほら、あの位の服着ていたって普通じゃない」
「あの水着だって…普通よね・・・」

『誰に見せるんだ…』
ギロロの言葉を思い出した。
「誰に見せるって…」

「あんたに見せたいに決まってるじゃないのよ…」
「だからいつもまっ先に着て見せるのに…」
「何でわかってくれないのよ…」

楽しそうに歩くカップルの姿を見ていた夏美は
「やっぱり宇宙人とではうまくいく訳無いのかな…」
と俯いて落ち込んでしまった。

と、その時
「あれ?夏美ちゃん、どうしたんだい?」

その声に夏美が顔を上げると其処には623が心配そうな顔をして夏美を見ている姿があった。
「む、623さん」
突然623と会って、しかも変な所を見られたと思った夏美は大慌てになる。

「な、な、なんでも、何でもないです」
夏美の返事に
「ふ〜ん、なんだか悲しそうだったからさ…」
「そ、そんな事…」

夏美の様子に623は笑って
「じゃあさ、明日の日曜日デートしようか?」
と夏美をデートに誘った、

「え?あ…そ…へっ?」
夏美はしどろもどろになっている。
「何か用事あるの?」
「い、いえ…」

「じゃあ、明日の10時駅前で、いいね?」
「嫌な事は忘れるに限るよ、じゃあね」

一方的に決めてしまうと623は行ってしまった。
「623さんと…デート…」
「え〜っ!」
夏美はその場に立ちつくしてしまっていた。
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