秋色の空(恋愛編)

□ママへ
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今日は母の日であったが
仕事が忙しく秋は自宅に早く帰宅することができなかった。

なるべく大事な日や記念日には子供たちと一緒にいてあげたいと思うのだが
それもままならないのが現実であった。

夜も更け、日も変わってしまった頃に秋は帰宅した。

「え、リビングの電気が付いている?」
「まさか、夏美達・・起きているの?」

美容に悪いのよ、などと思いながら秋は玄関からリビングに向かった。

其処は綺麗に飾られ
『ママ、いつもありがとう』
の垂れ幕に飾られていた。

「ごめんね、夏美、冬樹」
呟きながらソファの方に目をやると其処には
ソファに横になって寝ている夏美と何故か地球人スーツ姿のギロロがいた。
夏美には薄手の毛布が掛けられていた、ギロロが掛けてくれたのだろうと察しがついた。

「ギロちゃん?夏美・・」

そっと小さな声で夏美を起こさないように話す秋に

「待ってると聞かなくてな、結局寝てしまったが…」

少し微笑みながらギロロが答える。

「来たら起こしてやろうと思ったがよく寝ている」
「このまま二階に連れて行くから後で寝間着に着換えさせてくれ」

「あ、それでギロちゃん地球人スーツ姿なのね」
「まあ、そんなところだ」

ギロロは夏美を抱き上げると二階の夏美の部屋に運んで行った。

『あのお姫様だっこ、夏美が知ったらどう思うかしらね』
『ギロちゃんも気が付いていないみたいだし』

秋は「ふふっ」と笑うとソファに腰を下ろした。

テーブルの上にはカーネーションの花束が花瓶に活けてあり
その横には何やら手紙のようなものがあった。

秋がその手紙を手にすると其処には夏美の字で
「ママへ」
と書かれていた。

秋は手紙を読むことにした。

『ママへ
何時もあたし達の為にお仕事いっぱいでお疲れ様。
でも無理だけはしないでね、ママが病気になったら嫌だから。
今日は頑張ってお料理作ったから、もしよかったら温めて食べてね。
でも、夜遅くに食べると太っちゃうから気をつけて』

「夏美ったら、ありがと」
いつもの夏美の手紙の内容に秋は嬉しくなった。
手紙の内容は続く。

『本当は直接お話をしようと思っていたのだけど
きっとママが帰る前に寝てしまうと思うの、だから
お話は別の日にして、今日はお手紙を書くことにしました。』
『ママ、おかげさまであたしも高校生になれました。
改めて思うの、ここまで大きくなってこれたのもママが
お休みもなく一生懸命お仕事をしてくれているからだと。
そして一緒にいる時間は少なくてもあたしや冬樹に大きな愛情をもって包み込んで守っていてくれるからだと。

あたしはママの子で良かったっていつも感じているの。

だから、あたしはママに心配をかけるような事はしないって、そう思っているわ』

『でもね、ママごめんなさい
あたしはとんでもない親不幸かもしれません。
あたし、ギロロのことが好きになってしまったの。
ママはもう気が付いているのかもしれないけれど
おかしいわよね、だって地球人じゃないんですもの。
カエルなのよ、身長だって寿命だって何もかも違うのに。
あいつは侵略者であたしは侵略される側で
どう考えたって問題の方が多すぎるって
頭では解っていても
もう自分を止められないの』

「夏美…」
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