秋色の空(恋愛編)

□入学祝(大人になっていく君へ)
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朝、夏美が目を覚ますと枕元に小さな紙袋が置いてあった

「なに?これ・・」

袋の中にはきれいなオレンジ色の紙箱が入っている
紙箱を開けると其処には

「腕時計・・・」

袋の中には『入学祝』と書かれたカードが入っていた

「ママ、ありがとう。ママが枕元に置いてくれたんでしょ?」

ダイニングに降りてきた夏美は出勤前の秋に箱ごと時計を見せて尋ねた。

「あら、シンプルでかわいらしい時計ね、残念だけどママからのプレゼントじゃあないわよ」

「え?ママからかと思ったのに・・じゃあ誰が・・・」

「夏美にプレゼントくれる人は決まっているでしょ?」

「・・・もしかして・・ギロロ?」

「ギロちゃんったらねえ、昨日あたしの所に来て
『これを夏美に渡してくれ』ってその時計の入った袋を預けていったのよ」

秋は「ほうっ」と感心して夏美の時計を見ている

「夏美の好みにピッタリじゃない、ギロちゃんもなかなかやるわね」

確かにあたしはあまりごちゃごちゃしたデザインの物は好まない、
今、あたしの手にあるこの時計はすっきりシンプルな形と貝殻で出来たピンクの文字盤、
革のベルトもおそろいのピンクで文字盤の上部と裏側にはブランド名らしきマークが入っている

「地球の物だからギロロからだとは思わなかったわ」

「夏美、これちゃんとしたブランド物よ」
ブランド物と聞いて心配になった、あいつまた無理していないかしら?

「もしかして高いの?」

「それ程じゃあないけど、夏美の読んでいるファッション雑誌にも載っていることあるわよ」

「ギロロったら・・・」

あたしが高校入学のお祝いに腕時計が欲しいとママにおねだりしていた事を
あいつは聞いていたんだ、それだけじゃないあたしの好みもいつの間にか調べてたのね。

「ちゃんとお礼言わなきゃね、夏美」

「うん」

そう言うとママは仕事に出かけていった。

中学を卒業する時、ギロロとあたしは思わずお互いの気持ちを伝え合った、
お互いが感じていた以上にお互いの事を思っていた事が解ったあの日・・・

あれからまだ一週間ほどしかたっていない、

それであたし達の態度や行動が変わったかというと以前のまま特別変わった訳ではない、
今もあたし自身、あの出来事が夢だったのではないかと思えるくらい実感が無い。

だから、この時計のプレゼントも最初ギロロからだとは気がつかなかった。

あいつが聞いたら怒るかしら、気を落とすかもしれないわね、

ギロロのくれた時計をはめて庭先のテントに向かう
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