秋色の空(恋愛編)

□バレンタインパラドックス
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学校から帰宅した夏美は上機嫌でリビングから庭に出てきた。
その手には可愛らしいラッピングのされた箱が一つ…

今日はバレンタインデー
ギロロと夏美がお付き合いをするようになってから初めてのバレンタインデー
夏美が手にしているのはこの日の為に何日も前から準備して作り上げた特別製のチョコレートと
以前作った物より幾分マシな出来になった手編みのマフラー。

「えへへ…ギロロ喜んでくれるかな」
夏美がテント横の焚き火を見るとギロロの姿は無く、焚き火を焚いた様子も無い。
「あれ?ギロロ居ないの?」
夏美はギロロのテントを覗いてみる事にした。

「ギロロ」
テントの中には誰もいない。
「やっぱりどこかに出かけてるんだ…」
「…もう、なによ…今日はバレンタインなのよ」
「いてくれなきゃ困るじゃないの…」
主のいないテントに向かって文句を言っていた夏美だったが
机の上に置かれている物を見て言葉を失った。

ギロロの机の上には可愛らしいラッピングのされた箱が二つ置かれていたのだ。
「えっ…うそ…まさか…」
どう見てもそれはチョコレートにしか見えない…
しかもそのうちの一つは夏美の持って来た物と瓜二つの箱。

何時の間に自分の物があっちにと思った夏美であったが自分の物は間違いなく手元にある。
「あたしのと、そっくりなのにあたしのじゃない…」
夏美が驚くのも無理はない、夏美のラッピングは自分でしたものだ
夏美オリジナルである以上全く同じものがある筈がないからである。

夏美はピンときた。
一つはきっとモアちゃんがくれたものだろう…
と、するともう一つのあたしのチョコにそっくりな奴は…

「…ボケガエルかクルルの悪戯ね」
憤慨した夏美はテントから出るとチョコを持ったままケロロの部屋に怒鳴り込んでいった。



「こら!ボケガエル」
扉を蹴り開けると夏美は突然の夏美の訪問に驚いているケロロに怒鳴りつけた。
「あんた今度は何企んでるのよ!」

「な、何の事でありますか?夏美殿」
夏美の形相に驚きながらもケロロは首を傾げている。
「どうしたも、こうしたも、ないわよ、何よあの箱は…」
其処まで言いかけたところでどうにも要領を得ない感じのケロロの様子を見て夏美は言葉を止めた。

「夏美さん、いったいどうされたのですか?って言うか緊急事態?」
ケロロの横にいたモアが心配そうに声をかけた。
ここではじめて夏美はモアがいた事に気がついた。
「あっモアちゃんいたんだ…ごめんね」
おそらくモアはボケガエルの所にチョコを持って来ていたのだろう…
それを邪魔してしまったと思い夏美はモアに照れ臭そうに笑いながら詫びた。

「いいえ、いいんです…でも」
「夏美殿の今のありさま…何か大変な事が起きたのでありますか?」
モアとケロロが夏美を心配している。
夏美はケロロの様子からケロロは無関係であると悟った。

「うん…それがね…」
いきさつを説明しようとした夏美は思い出したようにモアに訊ねた。
「あっ、そうだモアちゃん…もう皆にチョコあげた?」
夏美の問いにモアは嬉しそうに答えた。
「まだですよ、まず最初におじさまにって…」
「おじさまのお部屋にお邪魔したばかりですから」

そう言うとモアは後ろから大きな箱を取り出してケロロに渡した。
「はい、おじさま…モアいっぱい気持ちを込めました、って言うか誠心誠意?」
「お〜っ、モア殿これは凄いでありますなあ…」
「モア殿ありがとうであります」
ケロロはモアからチョコを貰って上機嫌だ。

「おじさま…」
「モア殿…」

二人は見つめあったまま別の世界に入ってしまったようだ
「ボケガエルは関係ないみたいだし後はクルルね…」
「モアちゃんじゃないとするともう一つは誰のなんだろう?」
夏美は地下基地に下りて行き、クルルズラボを尋ねたがクルルは不在だった。


「クルルなら今日は宇宙ステーションで学会があるとかで出かけているのであります」
「学会?」

「何か難しい内容だったんで我輩忘れちゃったであります」
「ふうん…」
ケロロにクルルが不在だと聞かされた夏美は自室に戻っていった。
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