夏色の海(恋愛前編)

□「ベストショット」
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今日の夏美は上機嫌だ。

なぜならば先程まで久しぶりに親子3人でお出かけしていたからである。
当然カエル抜きだ。

色々とお買い物をしたり食事をしたり
普段留守がちな秋と一緒にいられる事は夏美にとって
最高のひと時なのだから。

秋は大変忙しい身である、先程も帰宅したとたん呼び出しである、夜には帰るからと仕事に出かけてしまった。

「ママ、疲れてないかな?」
少し心配になる、でも今日は久しぶりに楽しかった。

それに・・
此処にもう一つ上機嫌の理由がある。

それは今、夏美の手に握られている物
真新しい赤い色をした携帯電話だった。

今まで使っていた携帯をケロロの侵略作戦とかで破壊され
「じゃあ、ついでに皆で新しい機種に変えましょう」
秋の提案によって新型の物に変わったのだ。

夏美は前から新しい機種が欲しかったが余計なお金を
使わせてしまう事になるので言い出せなかった。
しかし、
「大丈夫よ、夏美の分の支払いはケロちゃんのお小遣いから引いとくから」
秋は笑顔でそう答えた。
「ゲーロー!」
ケロロの悲鳴が聞こえた。

「本当にあの時のボケガエルの顔ったら・・いい気味だわ」

夏美は携帯電話を眺めながら笑った。

「携帯、新しくなったのはいいけど前のをボケガエルが
壊しちゃってデータの移動が出来ないのよね」

「みんなのアドレスは手打ちで入れなおすとして・・・」

「待ち受け画面、どうしようかな」

夏美の新しい携帯はカメラは勿論、音楽も聴ける。
カメラの画素数もかなりの物だ。

「せっかく、カメラが付いているんだから何か撮って待ち受けにしようかな」

「うーん、何撮ろうかな」

その時、なんとなく庭先の赤い住人の事を思い出した。
特別な意味も理由もない、ただなんとなくである。

「携帯も今度のは赤いし、試し撮りしようかな」

夏美は部屋を出て階段を下りていった。


テント横にいるギロロに夏美が近づいてきた。

「ねえ・・ギロロ」
ギロロはいきなり現れた夏美に動揺しながらも答える。
「ど、どうした?夏美」

「えーと、あの・・・」
『写真撮らせて』と言うつもりだったが
言いかけたところで

急に写真だなんて言ったらやっぱり変よね、
ギロロだって変に思うわよね。

何故だかこの事を急に意識してしまった。

「あ、な・・・なんでもない」

夏美はくるりと向きを変えてその場から離れた。
「なんだ?変な奴だな」
ギロロは首を傾げたが
夏美はそそくさと離れていってしまった。
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