夏色の海(恋愛前編)

□夏色夏美
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8月
毎日暑い日が続いていた。

夏休みに入ってからの夏美はいつも以上に忙しい日々を過ごしている。
何時もの家事はもちろん、朝早いうちに宿題をこなし
その後は部活の助っ人に出かけていく毎日である。
今日も午前中から出陣の様だ。

「いってきま〜す」
玄関を出た夏美はいつもの様に庭に周りギロロにも挨拶をしていく
「ギロロ、行ってくるわね」
「今日は何だ?」
「午前中ソフトボールで午後はバスケよ」
「そうか、頑張れよ」
「うん!」
夏美は上機嫌で自転車をこいで出かけて行った。

「楽しそうだな…夏美」
ギロロは嬉しそうに夏美の後姿を眺めていた。

ギロロは元気ではつらつとした夏美が好きだ。
初めて会った時やパワードスーツ姿の戦士としての夏美も好きだが
元気いっぱいで嬉しそうにしている夏美を見る事が
ギロロにとって何より喜ばしい事なのだった。

しかしギロロには喜んでばかりいられない事もあったのだ。
「さて、俺も行くか…」
そう言って立ち上がったギロロはめまいを覚え、よろけてしまった。
「…これしきの事で…」
ギロロは背中に飛行ユニットをセットして空高く舞い上がっていった。



此処はケロロの部屋。
「隊長、いるかい?」
ケロロの部屋にクルル曹長が現れた。
「クルル曹長、いったいどうしたのでありますか?」
「おっさんの事なんだけどよ」
「ギロロの?」

クルルが頷くとケロロは
「それではギロロ伍長も交えて…」
とギロロを呼びに行こうとしたが
「おっさんはいないぜぇ…お出かけ中だ」
とクルルに止められる。

「お出かけ?・・どこにでありますか?」
「決まってるじゃねーか、ボディーガードさ…」

「なるほど、それならばいつもの日課であります」
納得するケロロを無視してクルルは話を続けた。
「その話しで来たんだぜぇ」
クルルはノートパソコンを開いてケロロに説明を始めた。



ギロロは夏美がソフトボールの試合を行っているグラウンド上空にいた。

前方には敵性宇宙人が3人
「地球最終防衛ライン723を倒そうとすると…戦場の赤い悪魔が現れる…」
「噂どおりだな…」
苦笑する宇宙人にライフルを構えたギロロが近づいていく。
「夏美には指一本触れさせん」

「お前もあの地球の女もまとめて倒してやる、地球は我々の物だ!」
「ふざけるな!」

ギロロは向かってくる敵性宇宙人を一人、二人と倒していく。
が、不意を突かれて肩にダメージを受ける。
「くっ…」
動きの止まったギロロめがけて宇宙人が飛び込んでくる、
「今だ…死ねぇ!」

その時、『ボコッ』という鈍い音と共に敵性宇宙人の頭にソフトボールがぶつかってきた。

下のグラウンドで夏美の打ったホームランボールがたまたま敵性宇宙人に命中したのだ。
その隙にギロロはビームライフルで敵性宇宙人を倒した。
ボールは真下に落ちていった。

「夏美、ホームランよ、すごい!」
「あのボール変な落ち方だったね」

ホームベースに戻ってきた夏美を友人達が迎え褒めたがボールの飛んで行った方向を見ていた夏美は
「…ギロロ?」
と呟いた。

ギロロは既に其処にはいなかったが
夏美は自分の打ったボールの先にギロロの姿を見たような気がしたのだった。
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