夏色の海(恋愛前編)

□母の日
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今日は母の日。

珍しく早く帰宅した秋は
夏美や冬樹、そしてケロロ達に母の日を
祝ってもらっていた。

「ママ、いつもお仕事お疲れ様」
「今日はあたしが特においしい料理を作るから」
「先にお風呂に入ってゆっくりしていてね」

「じゃあ僕はその後で肩もみをするよ」
「それじゃあ吾輩はおみ足をマッサージするであります」

夏美、冬樹、そしてケロロ各々が
秋をねぎらっていた。

テーブルの上には
夏美たちが買ってきたカーネーションが飾られていた。

「秋」
傍にいたギロロが
秋の名を呼ぶと手に持っていた一輪のカーネーションを手渡した。

「えっ?」
「ギロちゃんがこれをあたしに?」
「ああ」
秋は驚いた、一番自分たちとのなれ合いを嫌がるギロロが
まさか自分にカーネーションをプレゼントしてくれるとは考えもつかなかったからだ。

「え、ギロロが?」
「伍長?」
「ど、どうしたでありますか?ギロロ伍長」

周りにいたみんなが驚いた。
だがギロロ伍長は

「ま、まあいつも庭先を間借りしているしな」
「挨拶代わりだ、くれてやる」

と言ってリビングを出て行った。
秋は

「わあ、ギロちゃんありがとう」
と笑顔でお礼を言っていたが、他の者は茫然としていた。

そんな日も夜になって
それぞれが自室に戻り
夏美が部屋にいるとベランダの窓をたたく音がした。

「だれ?冬樹?」
カーテンを開けると其処には赤いケロン人。

「ギロロ?どうしたのこんな夜に?」
「すまん夏美、ちょっといいか?」

夏美は窓を開けてギロロを中に入れた。

「それで、何の用なの?」

夏美に尋ねられてギロロは顔を赤く染めながら俯き
「これだ、受け取ってくれ」

と、一輪のカーネーションを手渡した。

「はあ?カーネーション?」
怪訝そうな夏美を見てギロロは動揺した。

「き、きょ、今日は世話になっている女に『かーねーしょん』とかいう花を贈る日なのだろ?」

「い、何時もあの馬鹿がおまえや秋に世話をかけてるから…」
「あれでも一応俺達の隊長だからな」

横を向き俯いて少し恥ずかしそうにギロロは話した。

「ちょ、ちょっとギロロ」
「その話、どこで仕入れたのよ」

夏美がいきなり笑い出したのを見てギロロは真っ白になって固まってしまった。
「な、なつ・・・み、違うのか?」

ギロロの姿を見て夏美は笑って悪かったと感じ
「あのね、ギロロ」
「今日は『母の日』と言ってね」
「母親に感謝の気持ちを込めて祝う日なのよ」

「あたし、お母さんじゃないでしょ?」

と、ギロロに母の日について説明した。

「そうだったのか、俺は・・・・」
「いや、すまなかったな夏美」

振り返り立ち去ろうとするギロロを夏美は抱きかかえた。

「おわっ!な、夏美、何をする!あ、謝るから・・」

うろたえるギロロに
「あんたにだってお母さんはいるのよね?」
「あ、あたりまえだ」

「ずっと会えなくて寂しくないの?」
「俺はもう成人だからな」

「あたしは大人になっても駄目かもね」
「あんた達みたいに遠くに離れて暮らすなんて」
「考えられない」

「夏美?」
ギロロは抵抗を忘れて夏美を見つめる。

「じゃあ、今日は少しだけ」
「あたしがギロロのママになってあげます」
「カーネーションももらったしね」

夏美はギロロを膝に乗せて優しく抱きしめた。

「な、なつみい〜!!」

ギロロは何の物体か判らなくなるほど真っ赤になって
気を失っていった。

「きゃっ!ギロロ、ギロロー、大丈夫?」
其処にはびっくりして心配をする夏美の膝の上で気を失いつつも
『これ以上ない』というような満足顔をしたギロロ伍長がいた。

それからしばらく夏美の机の上にはギロロにもらった
カーネーションの花が飾られていた。


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