春色の夢(アニメ後日談等)

□「罰(ばつ)」
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「今度、小雪ちゃんに余計な事したら許さないからね!」
「もうしないであります」

小雪に「普通」というものを教えてやる…と言って
小雪を自分達のスパイに育てようとしたケロロ達の企みは
夏美によって阻止され
ケロロ達は縄で縛って吊るしあげられている。

「本当にしょうがないわね」
夏美はケロロ達の縄を解いた。

「恩にきるであります」
ケロロ達が逃げて行こうとした、その時
「ちょい待ち、ギ・ロ・ロ」
夏美がギロロを名指しで呼んだ。

ギロロは驚いて振り返ると夏美を見た。
かなり不機嫌な顔をしている。

「今回、あんた頑張ったんだって?」
怒りのオーラを出して夏美が迫ってくる。

「ギロロには、まだお仕置きが必要ね…」
「な、夏美・・・」
「ちょっといらっしゃい!」

ギロロは夏美の部屋に連行される。
「ギロロ…後は任せたであります」
ケロロは敬礼をしてギロロを見送った。

「なぜだ〜!」
ギロロの叫び声が聞こえた。


此処は夏美の部屋。

小さくなって座っているギロロの前で夏美は
小雪との会話を思い出していた。

「ギロロさんに『普通のデート』を教えてもらったんですよ」
「普通のデート?」
「はい!」

ケロロ達をつるしあげた後小雪とのお出かけに来た夏美は
ギロロが地球人スーツで小雪とデートをしていたことを知った。
正確には「デートのおけいこ」らしいのだが。

「ど、どんなデート?」
ビックリした夏美が様子を聞くと小雪はにこにこと笑いながら答えた。

「え…と…」
「腕を組んで…」
「ショピングして…」
「お食事して…」
「ボートに乗って…」

「・・・・・・・・」
夏美は黙ってしまっている。

少しの沈黙の後
「そ、そう…」
夏美は小雪に聞いたのだった。

「小雪ちゃん…楽しかった?」
「はい、とっても! 勉強になりましたよ」

「そう…」
俯いた夏美の表情は何故か暗かった。


小雪との会話を思い出していた夏美はデートの事をギロロに聞いた。
「小雪ちゃんに聞いたわよ…」
「あんた、随分『普通のデート』に詳しいんだって?」
「まったく、小雪ちゃんに変な事吹きこんで…」

「そ、それはだな」
弁解しようとするギロロに夏美は強い口調で言った。

「ギロロ、今回の罰として」
「あたしにも普通のデートって奴を教えなさい!」

「へ?」
茫然とするギロロを無視して夏美は勝手に話を進める。

「ら、来週の日曜日・・・いいわね!」

ギロロは驚いて立ち上がった。
「夏美、何故だ!」
「何故お前にデートを教えねばならんのだ」

「何故、お前に」この言葉に夏美はカチンときた。
『じゃあなんで小雪ちゃんなのよ』
『そう聞けば「任務だからだ」と答えるだろうが…』
『それではあたしの気持ちがおさまらない』

夏美はギロロが任務とは言え小雪とデートした事が面白くなかったのだ。

「あたしだって普通のデートってものを知りたいのよ」
思いついた理由をギロロに伝える。

「断る!」
ギロロの口調は強く厳しいものだった。

「何でよ!?」
しっかり断ってきたギロロにも驚いたが
ギロロが自分とはデートをしたくないのかもと思うと悲しかった。
「あたしとでは、嫌なの?ギロロ…」

ギロロは寂しそうな顔を見せる夏美に驚いた。

「デートは訓練で行うものでは無いぞ」
ギロロの言葉に
「小雪ちゃんとはデートしたじゃないの」
と顔を伏せたまま呟いた。

「それはだな・・・」
返事に困るギロロに

「訓練じゃなくてもいいから…」
夏美が小さく呟いた言葉はギロロには届かなかった。
代わりに届いたのは後から大きな声で出た可愛くない言葉

「いい、これはあんたに対する「罰」なのよ!」
「最高のデートコースを用意しなさいよ!」

「りょ、了解!」
夏美の迫力に押されたギロロは一週間かけてほとんど寝ずに
デートコースを設定したがその表情は幸せそうであった。

そして夏美も
次の日曜日までの一週間…
ものすごく上機嫌だった。


 

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