春色の夢(アニメ後日談等)

□ギロロ旅立ち始末記「夏美視点」
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ギロロを乗せた銀河特急は空のかなたに消えていった、


別れ際はもう自分でも何を言っているのか分からなくなっていて
その場に座り込んだあたしは涙でぐちゃぐちゃだった。

言いかけていた言葉を小さな声で呟いていた。

「・・・き・・・」

自分でも信じられなかった、・・そんな言葉をあの赤い侵略者に
叫ぼうとしてたなんて、おまけにもう会えないなんて・・。


ー・・いい女になるのだな・・−

庭で読んだ置手紙の言葉が急に浮かんだ

「・・・な・・なによ・・いい女・・・ってわかんないよ・・・」


そんな時
自分を見つめる多くの視線を感じた・・・そうだ、
みんなのおかげで最後にギロロに会うことが出来たのだ
・・・みんながあたしを心配している。

しっかりしなきゃ・・・みんなに心配かけちゃダメ・・・

あたしは乱暴に涙目をこすり、立ち上がって頑張って笑いながら振り返った。

みんなの表情は複雑そうだったけど・・・

ギロロ・・・・・

あたし、いい女になれるかな?


みんなの前では頑張って平静を装っていたけど
部屋の中で一人になった時、自分の中の感情を支えていた物が
一気に崩れ涙がまた溢れ出した。

「なんで・・あたしなんでギロロに『スキ』って言おうとしたの?」

そうよ、あたしがスキなのはサブロー先輩で・・・

サブロー先輩は
かっこよくて・・・
やさしくて・・・
・・・・それで・・それで・・・、

ギロロなんか
宇宙人で・・・
カエルで・・・
赤くて・・・
侵略者で・・・
自分勝手で・・・
堅物で・・・
変な奴で・・・
・・・・・・・・・・・
でもやさしくて・・・
いつでもあたしを見ていてくれて・・・
本当に危なくなると必ず助けてくれて・・・
一緒にいるとなぜか安心できて・・・
すごく素直になれそうな感じがして・・・

あたしの中に広がるギロロの姿や言葉・・

ああ、そうね・・・
こんなにも、こんなにも

ギロロは

あたしの傍にいて・・
あたしのことを心配して・・
あたしの事を守ってくれていたのね。

いつの間にかそれが心地よくて当たり前のような気になっていた。

気が付かなかった・・・あいつがこんなに胸の中にいたなんて・・・

「知らないうちに侵略されてたみたい・・・」

・・・でも・・・

・・何よあいつ、あたしにこんな思いさせておいて・・

・・何も言わないで・・

・・置手紙一つだけで・・

・・どうして勝手にいなくなっちゃうのよ・・

湧き上がるもう一つの思い

「酷いじゃない?これって裏切りよね?」
急激に成長した思いは胸の中で複雑に渦を巻き、
いっそうあたしの胸を苦しめた。

「ひどいよ・・今度会ったら絶対に許さないんだから・・」

そう呟くと、溜息をついてうなだれた。

「そう・・か・・・もう会えないんだ。」


「ば・・・か・・ばか・・・ギ・ロロ・・・のばか」

ベッドの上にうずくまるとずっと夜がふけるまでその言葉を繰り返し続けた。

その日は何も出来なかった、何も手に付かなかった・・・
宿題も・・・大好きなラジオも・・・・・。
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