春色の夢(アニメ後日談等)

□クッキーはあなたの為に
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ギロロと夏美の二人が
ギロロのテントと共に砂漠に飛ばされた日から
数日が経とうとしていた。

「ギロロ〜、いる?」
夏美がギロロのテントにやってきた。
「ど、どうした夏美」
あの日からまだ数日しか経っていない
ギロロはあの時口走ってしまった言葉の数々を思い出し
照れ臭くて顔を真っ赤にしている。

「クッキー焼いたの、食べてくれる?」
夏美はそう言うとギロロの前にクッキーを差し出した。
「なんだ、また冬樹は留守なのか?」
「ううん、そうじゃないのよ…」
「これはギロロの為に焼いてきたんだから」
そう言いながら夏美はクッキーを一つとると
ギロロの口元に運んだ。

「…俺の為?」
首を傾げるギロロに夏美は手を止めて答えた。
「だ、だってこの前のお礼しなきゃって…」
「クッキー焼く位しかできないから…」

俯いて小さな声で話す夏美にギロロは尋ねた。
「クッキーと言えばこの前のクッキーはちゃんとサブローに渡せたのか?」
本当は一番聞きたくない事であるが
俯く夏美の為に話題を変えようとしたのである。

「えっ?…ううん、結局渡さなかったわ…」
「なぜだ?」
予想外の答えにギロロは驚いた。
「…あの時ね、ポケットの中で潰してしまったの」

「それならこのクッキーを持って行け」
ギロロの言葉に夏美は顔をあげ
急に強い口調で声を荒げた。
「これはギロロ用なの!」
夏美は自分の声に驚いて声を小さくし
「とにかく…食べてみてよ」
と言って手に持っていたクッキーを再びギロロの口元に運んだ。

「いや…しかし…」
躊躇するギロロに
「食べてくれないの?…」
夏美の目が潤み始めている。
「た、食べます」
夏美の手から直接ギロロの口にクッキーが渡された。

「どう?」
「この前より甘さが抑えられている、美味いぞ夏美」
ギロロの感想を聞いて夏美はホッとした様な顔をした。
「この前、甘いって言ってたでしょ…」
「味を出しながら甘さを抑えるの大変なんだからね…」

「だから、ギロロ用なのよ…」
「わざわざすまんな」
「どういたしまして」
夏美の顔に笑顔が戻った。
「横に座ってもいい?」
「ああ」
夏美はギロロの横に腰を下ろした。

「ギロロ、あの時はありがとう」
「改めてお礼が言いたかったの…」
「い、いや、軍人として当然の…」
夏美の笑顔にギロロはつい顔をそむけてしまう。
夏美はギロロの言葉の途中で再び話し始めた。

「でもね、ギロロ」
夏美の口調が暗く小さなものに変わっていく
「あんた、あたしを助けるんだって言って…」
「ボケガエルのロボットに一人で向かって行ったでしょ?」
「ああ…」

「もしあそこが本当に未来の地球で…」
「あんたがあの戦いで死んじゃったら…」
「あたし…一人でどうすれば良かったのよ…」

「俺は死なん…」
「嘘つき…」
「すまん…」
「守るなら…最後まで守ってよね」
「了解だ…」

ギロロは俯いて小さな声で返事をした。
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