秋色の空(恋愛編)

□「提督」
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夏美とギロロは川の横の舗装もされていない道を歩いていた。

「わざわざ着替えなくてもいいだろうに…」
不思議そうに夏美を見るギロロに
「えへへ、ちょっとね」
と、ギロロの疑問には答えなかった。
「この先に昔遊んだ場所があるのよ、涼しくて気持ちいいんだから」
上機嫌の夏美はギロロの手をひっぱり土手を下りていった。

其処は川の支流と言った感じの所だ。
奥に行くと流れの速い深みがあるが全体的には浅めの場所である。

二人は河原に腰を下ろした。
川の流れが優しい音をたて、河原では爽やかな風が
木々の葉を揺らし、心安らぐ空間を作り出していた。

「う〜ん、きもちいい」
「なかなか良い所だな…」
「でしょでしょ!」
そう言って笑った夏美は川を見ながらギロロに話しかけてきた。

「ギロロ、あたし今回ね…」
「おばあちゃんにあんたの事を全部お話ししようって思ってきたの」

「おばあちゃん、なんて言ってくれるかなあ…」
「きっとびっくりするわよね…」

「喜んでくれるかなあ…」
「それとも…やっぱり…」

「あたしのこと『おかしな子』って思うかもね…」
「…もし、喜んでくれなかったら、許してくれなかったら…」

しだいに夏美の声は小さくなっていった。
「夏美…」
ギロロは夏美の肩に優しく触れた。

夏美は小さく頷くと
「…でね、此処に来た訳はね」
「お、おい夏美」

夏美は川の中に入っていった。
「これ水着なのよ、一度見せたでしょ」
「水着、水着はその下に着ている奴では無かったか?」

「下のビキニもそうだけどこの上下も水着なのよ…あっ、つめた〜い!」
夏美は履いてきたゴム草履のまま水をはねて遊んでいる。

「やれやれ」
ギロロは小さく息を吐くと
「あまり遠くに行くな、奥は流れが速いぞ」
と夏美に注意して河原に腰を下ろし直した。


ギロロは先程の夏美の言葉を思い出していた。
「…普通は素直には認めてくれんだろう」
「宇宙人なのだからな…」
そう言いつつも提督は夏美の祖母で、あの秋の母親なのだという事を考え
「普通ではないかもしれんな…」
と、ニヤリとした。


「ギロロもおいでよ〜」
「うむ…」

ギロロは立ち上がり夏美の許に行こうとして夏美が次第に深みの方に近づいている事に気がついた。
「夏美、そっちに行ってはイカン!戻って来い!」
叫ぶギロロに気づき
「えっ?なに?」

夏美が返事をしたその時

「きゃっ」
夏美の姿が水面から消えた。
「いかん!夏美」
ギロロは川に飛び込んだ。

夏美はスポーツ万能である、水泳だって得意中の得意だ。
だが足を滑らせ沈んだ先は川の流れも速く川岸は滑りやすい
もがく夏美はしだいにおぼれていった。

夏美を追うギロロはカエル型宇宙人であるケロン人らしく泳ぎは得意である。
が、夏美がのまれた川の流れは速い
ギロロはウォータージェットを転送させ腰に装着した。

ギロロの速度が増幅され一気に夏美に接近した。
夏美は川に流されすでにもがく事も無くなっている。
「頭など撃ったら大変だ」

ギロロは夏美に追いつくと一気に川の中から飛び出した。
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