夢色の花1

□「ぎおお」
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夏美の部屋にクルルがやって来た。
手には新しい銃を持っている。
「先輩、お待たせ」
「クルルか、用意できたのか」

「まあな…でもいいのかよ」
「何がだ?」

怪訝そうに尋ねるギロロにクルルは嫌みのこもった眼つきで笑いながら話しかけた。
「このまま今の日向夏美が大きくなれば間違いなく先輩のものになるぜぇ…」
「元に戻せばこの小さな日向夏美の記憶はなくなる…」
「お嫁さんにはなってもらえねえかもな、くっくっくっ…」

「くだらん、早く戻せ…」
嫌みたっぷりに笑うクルルに軽い怒りを覚えたがクルルの言う事はもっともだった。

おしいと思わないかと言われると確かにそんな気もする。
どちらの夏美も夏美には違いない…
だが自分の夏美はやっぱり何時もの夏美なのだと思ったギロロはクルルに銃の発射を催促した。
「はいよ、ポチっと…」
クルルが発射したビームを浴びて小さな夏美は元の夏美に戻っていった。



クルルが地下基地に戻るとモニターで一部始終を見ていたケロロが残念そうにしていた。
「いい感じだったでありましたのに…」
「あのまま行けば夏美殿が今度大きくなった時にはギロロの事が大好きな夏美殿になったかもしれないのであります」
「ギロロ伍長も、もったいない事をしたでありますな」

「そうかな、くっくっくっ…」
「何がおかしいでありますか?クルル曹長」
訳ありげに笑うクルルにケロロは首を傾げた。
クルルはケロロにニヤリと笑いを浮かべながら答えた。

「隊長、よく考えてみな」
「おっさんが、あのちびっこ日向夏美にしていた事と…」
「いつもの日向夏美にしている事と…」
「どこか違いはあるかい?」

「外敵から守ったり、話を聞いてやったり…芋を焼いてやったり…」
「…まったく変わらないでありますなあ」

「だろう?」
「そして日向夏美は日向夏美だ…」
「ちびっこだろうが元に戻ろうが…」
「もし、その時の記憶がなくても同一人物なんだぜぇ…」

「ちびっこの時におっさんになついたって事はよう…」
「まさか?」

少し驚き顔のケロロを見たクルルは自分の席に戻りながらケロロのまさかに答えた。
「まあ、実際の所は日向夏美のみぞ知るって事だ」
「面白い事になりそうだぜぇ、くーっくっくっくっ…」



元の姿に戻った夏美は焚き火の前でギロロと焼き芋を食べている。
「ほら、焼けたぞ」
「ありがと…あちっ!」
「慌てるな、少し冷ましてやる…」
ギロロは夏美の焼き芋に息を吹きかけて冷ましている。
小さな夏美の時と同じように…

「優しいのね…ありがと、ギロロ」
「な、なに…」
元に戻った夏美の笑顔にノックアウトされそうになり、ギロロは慌てて顔を横に向けた。
その様子を夏美は嬉しそうに…そして何故か懐かしそうに見ている。



モニターで二人の様子を見ていたクルルは小さく呟いた。
「本当に消す訳じゃあねえから記憶がない訳じゃあねえ…」
「記憶の奥にしまい込んでいるだけだ…」
「元に戻った時も若返った時の事を覚えちゃいない様に見えるが…」
「同じように記憶の奥にしまい込んであるだけなのさ…」
「…だから…もしかしたら…」
「くーくっくっくっくっ…」
モニター前のクルルは嬉しそうに笑っていた・



焚き火の前で一生懸命芋を焼くギロロを夏美は嬉しそうな顔で見つめ続けている。
何時も以上に柔らかな微笑みを浮かべている夏美の口から小さな囁きが聞こえた…

「…ギロロ…約束だよ…」
それはギロロに聞こえないほど小さな…小さな囁きだった。





―あとがき―

りあす様
お待たせしました。
48000キリリクのお題は
「ケロロ達のイタズラで子供に戻ってしまった夏美、もちろんギロロの事も忘れてしまうのですが…」
「それでも面倒を見てくれるギロロに次第になついて、将来を誓い合う〜」です。

ケロロ達のいたずらではなくなってしまいましたが
記憶についてはお話し全体にからめてみました。
最後は夏美も元に戻る訳ですので
記憶を使って含みのあるお話しにしてみたのです。
「ギロロの事も忘れてしまう〜」
から考えてみましたがいかがでしょうか?

小さな夏美に対してもいつもの夏美と変わらぬギロロですが
よく見ると小さい夏美に対しての方が優しいのは
きっと子供だからでしょう。

このお話しでよろしければどうかお受け取り下さい。
キリ番報告ありがとうございました、これからも宜しくお願いいたします。

>皆様へ
りあす様以外の方はもちろんお持ち帰り厳禁でございます、ご了承ください
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