夢色の花1

□「ぎおお」
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小さな子供というのはじっとしていない
それは今の夏美も同じだ。
ギロロがちょっと目を離すと外に出て行って車に轢かれそうになったり…
近所の大きな犬に立ち向かっていったり…
公園に一人で出かけて怪しい男に連れて行かれそうになったり…

とにかく目が離せない状態なのである。
その度にギロロは夏美を守った
車に轢かれそうな時は身を呈して道路に飛び出し…
犬に立ち向かって噛まれそうになった時には盾となり…
怪しい男は人知れず褒むりさり…

とにかく身を呈して夏美を守り続けたのである。
ギロロの身体は心労と傷でボロボロになっている。


その努力が功を奏したのか小さな夏美は徐々にギロロになつくようになっていった。
「ぎおお、ぎおお…」
ギロロの姿が見えないと逆に探すようになっていた。

心配した秋が様子を覗くとリビングのソファの上でギロロにもたれかかる様にして安らかに寝ている夏美の姿があった。
「元に戻るんでしょ?」
「もちろんであります」
「じゃあ、それまでギロちゃんに任せちゃおうかな…」
ケロロの言葉を聞いて安心した秋は安らかな寝顔の夏美を見ると優しく頷いた。



ギロロと小さな夏美は焚き火の前で焼き芋を食べている。
小さな夏美もやはり焼き芋が好物の様である、同一人物なので当たり前ではあるが…
「ほら、ちょうどいい焼け具合だぞ」
「わあい」
「ちょっと待て、熱いから今冷ましてやる」
ギロロは焼きあがった芋に息を吹きかけて冷ましてから夏美に渡した。

「おいひい…ぎおおはお芋焼くのうまひれ…」
お芋を頬張りながら小さな夏美は嬉しそうに笑っている。
「ほら、口の周りが芋だらけだぞ」
「えへへ…」
ギロロに口の周りを拭いてもらうと小さな夏美は又笑った。
その様子を見てギロロは顔を赤くしている。



ケロロ達はその様子をモニターで見ていた。
「何か、いい感じでありますな」
「おっさん、小さな日向夏美にもデレデレだぜぇ」
「見ろよ、あのだらしない顔、くっくっくっ…」
「要するにおっさんにとって小さな子供だろうと何時もの中学生だろうと…」
「日向夏美に変わりはないってこった」

あきれ顔で話をするクルルの言葉にケロロは笑って頷いた。
「そんな事当たり前でありますよ…」
「ねっ、モア殿」
ケロロが振り返ってモアに微笑むと一緒にモニターを見ていたモアは満面の笑みを浮かべて頷いた。
「はい、何だか昔の私とおじさまを見ているような気がして懐かしいです」

「さあ、元に戻す機械が出来たぜぇ…」
席を立つクルルをケロロが止めた。
「今いい感じでありますのに…このまま行けば夏美殿はきっとギロロの事を…」
ケロロの言葉が終わらないうちにクルルは中央作戦室を出ていった。
「それを決めるのはおっさんだ…」
「俺たちじゃねえ…」
そう言い残して…



ギロロと小さな夏美は夏美の部屋でおままごとをしている。
『なんで俺がおままごとなんて…』
そう思うギロロであったが夏美の希望なら仕方がない。
夏美の作るおもちゃの料理を食べる真似をして付き合っている。
「おいちい?」
「ああ、うまいぞ」
小さな夏美がにっこりと笑って尋ねるのでギロロは顔を真っ赤にして答えた。

ギロロの言葉に小さな夏美は気をよくしたのか嬉しそうに笑っている。
「じゃあ、あたちがママで…ぎおおがパパで…」
「この子があたち達の子供ね…」
夏美とギロロの間には夏美のお気に入りであるクマのぬいぐるみが置かれている。

ままごとでのお話しである、ではあるがギロロは夏美との結婚を想像して体中赤くなってしまっている。

「ねえ、ぎおお?」
小さな夏美が後ろからギロロに抱きついてきた。
「あたち、ぎおおのおよめしゃんになう〜」
「ぎおおぅ、あたちのこと…およめしゃんにちてくえう?」
小さな夏美はギロロの耳元で恥ずかしそうに囁いた。

「お前が大人になったらな…」
小さな夏美が訳も分からずに言っているのだろう…
それでもまあ、自分の事をよく見てくれているに違いない。
元に戻ったらきっと忘れてしまう約束だろうが…

ギロロはそれでも良かった。
夏美がそう言ってくれたことが何より嬉しかったのだ。
「うん、やくしょくだお」
小さな夏美は嬉しそうにギロロの背中に貼りついていた。
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