夢色の花1

□そっとあなたに…
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そんなある日の事
ギロロは今、雪山の洞窟の中にいる。
横ではケロロがあまりの寒さに体を震わせている。
焚き火を焚いたもののあまりの寒さにギロロ自身も凍えそうであった。

ケロロ小隊で雪山での訓練をしているときにケロロが足を滑らせて転落しそうになった。
ギロロが慌てて助けようとしたがギロロも一緒に転落してしまったのだ。
天候は吹雪に変わり偶然見つけた洞窟に身を寄せながら
ギロロ達は他の隊員が助けに来るのを待つことにした。
吹雪が少しでも収まらない限り助けが来る事もないだろう
ギロロは装備の中に入れてあった非常食を食べようとした。

「な、ない!」
ギロロの装備の中にある筈の非常食が消えていた。
「あ〜、さっきお腹すいたから我輩食べちゃった」
ケロロがつま楊枝をくわえながら呑気に答えた。
「ばっかやろう、お前のをよこせ!」
ギロロが怒鳴ると
「さっき早弁したからとっくに無いでありますよ」
ケロロの言葉にギロロはがっくりと肩を落とした。


どれほどの時間が経ったであろうか
吹雪は止まず、焚き火の火も弱くなってきた。
寒さと空腹でギロロの意識も薄れ始めている。
ケロロはギロロの分まで食べたくせに
お腹がすいた、寒いと騒いでいる。
殴り倒してやりたかったが何時もの事だし、そんな元気もない
とりあえず焚き火にする物は無いかと装備の中を探ってみた。


「んっ?」
装備の脇にあるポケットの中に何か入っている。
このポケットは普段使用しない所なので今まで気がつかなかったが
確かに何かが入っている様だ。

ポケットの中を探ると出てきたのは
使い捨てカイロとチョコレート…
「こんな物に覚えなどないが…」
「いったい誰が…」
小さな声で呟いていたギロロの脳裏に夏美の姿が浮かんできた。
「…そうか…」



訓練に出かける前の日の事だ。
ギロロも準備の為、テントの中で荷物をまとめていた。
その様子を夏美は隣に座って眺めている。
「何日行ってくるのよ」
「たった二日間だ」

「そう…」
「どこへ行くの?」
「雪山だ」

「大丈夫なの?」
「何がだ?」

「凄く寒いんでしょ、暖かくしていかないと」
「非常食それだけで大丈夫?」
「心配症だな、たった二日間だけだ」
「でも…」

心配する夏美をよそにギロロは荷物をまとめていた。
「伍長さん、おじさまがお呼びです」
モアからの連絡にギロロはテントから出ていった。

夏美はいったんテントから出て行って自分の部屋から使い捨てカイロと
チョコケーキを作ろうと思って買い置きしてあったチョコレートを持ってくると
こっそりギロロの装備の脇にあるポケットに忍ばせたのだった。

もちろんギロロはその事を知らないで訓練に出かけて来たのだが
『この様な事をしてくれるのは夏美以外にはいない…』
ギロロの中にははっきりとした確信があった。

何故なら…
「ほらケロロ、カイロとチョコレートだ」
「お〜っ、これはありがたいのであります」
「…てか、どしたの?これ」

「まあな…」
使い捨てカイロを貼りチョコをかじる。
苦味の聞いたビターチョコ…
俺の為にビターチョコを用意する奴はあいつしかいない…

「うわ〜、にげ〜っ…よりによってビターチョコであります」
「苦くて食べられないでありますよ…」
文句を言うケロロに
「馬鹿を言うな…俺には甘すぎる…」
「心の中まで甘くてとろけそうだ…」
ギロロは目を閉じて口元を緩めると
「吹雪も止んだようだ、ケロロ…もうひと頑張りだぞ」
大きな声でケロロを励ました。
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