冬色の宇宙(短編集)その4

□ずっとこのまま……
1ページ/1ページ

ずっとこのまま…


今回は恋愛中のお話(夏美視点)です。


今年のゴールデンウィーク
あたしは大好きなギロロにお願いしたの
『静かなところで二人きりになりたい』って……

だって二人きりになりたかったの
どんな素敵な景色も音楽も今はいらないわ。
二人だけの甘い時を過ごしたいの。

そうよ
余計な音楽なんかいらない
ギロロの声が聴きたいの。
その低く甘い声であたしに愛の言葉を囁いてほしい。

心癒す綺麗な景色は素敵だけど
あたしはギロロを見ていたい。
ギロロもあたしだけを見ていて欲しい。

そんなあたしにギロロが選んでくれたのは
人里離れた山の中にある湖の畔。

そよぐ風が新緑を優しく揺らしている。
小鳥のさえずりさえもあたし達に気を使っているような
そんな二人だけの静かな時が流れていく。

いっそこのまま時間が止まってしまえばいいのに……
あたしは腕で真面目に時を刻み続けている時計をそっと外した。

ギロロは侵略者であたしは侵略を阻止する者……
たとえ愛し合っていてもその関係は変わらない…でも

でも今は……
今はただ二人、手をつないだまま見つめ合っていたい。
このまま何時までも……

二人だけの世界の中で




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ