冬色の宇宙(短編集)その4

□愛犬ギロロ号
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今回のお話は少年エース3月号に掲載されている原作漫画221話
「ギロロ、昇格せり!」の後日談です。
ネタバレがありますのでご注意ください。
※ほんの僅かに大人っぽい表現があります。



ここはクルルズラボ

「まったく酷い目に遭ったであります」
メディカルカプセルから出てきたケロロは大きく溜息を吐くとモアの差し出したドリンクを飲み乾した。

掃除当番をサボり夏美に罰としてガンプラを没収されたケロロは復讐の為、自らの姿を夏美の苦手な『ぬるぬるしたもの』に変えるも
日向家の警備をすることで『居候』の評価から脱しようとするギロロの手にかかり粉々に散ったのである。
モアに回収されたケロロはどうにか元の身体に戻ることが出来、現在に至るのである。

「おじさま、よかった……」
手榴弾により飛び散ったケロロを必死で回収・看護したモアは元気なケロロの姿を見て安堵の息を吐いた。
「モア殿ありがとうであります」
自分の横に張り付いたまま離れようとしないモアの頭を優しく撫でると笑顔を見せた。


……が、モアが落ち着きを見せるとケロロの表情は一転して重苦しいものになっていった。
「あの赤達磨め……」
「折角夏美殿を追い詰めても毎度毎度邪魔してくるのであります……」
「地球最終防衛ラインを助けていたら我輩達の侵略は一向に進まないのでありますよ」
自らの繰り出す作戦がへっぽこなのを棚に上げながらケロロは深い溜息を吐いた。


「そう言えばおっさんの奴よう……」
クルルがモニターの電源を入れると画面に庭先の様子があらわれた。
それは夏美が洗濯物を取り込みながらギロロと会話している光景だ。

「確かに居候って呼ぶわけにはいかないよね……」
「う〜ん…そうだ!番犬ね!」
画面には番犬と呼ばれてショックを受けているギロロとうれしそうに鼻歌交じりでリビングに戻る夏美の姿が映し出されている。


「番犬…で、ありますか……ギロロの奴、かませ犬だけではなく夏美殿の犬に成り下がり今度は我輩達の敵に回ると言うでありますか……」
ケロロはショックで目を丸くしている。
「ま、元々飼いならされていたようなもんだからいいんじゃね?く〜、くっくっくっ」
確かに今までも夏美がピンチになると何があっても夏美を守ろうとしていたのだから番犬のようなものだと言われても仕方がない。

「それに犬って言ってもいろいろあるんだぜえ、くっくっくっ……」
「そうなんですか?」
クルルの意味深な言葉にモアが興味を示した。
「たとえば『番犬』として外敵、要するに日向夏美に寄って来る地球人の男どもを蹴散らしたりよう……」
「『愛玩犬』ならどこでもいっしょで可愛がってもらえるしな……」
「それに夜なら『バタ……』」
「わ〜っ!クルルストップ!ストップであります!!」
クルルの言葉をケロロは慌てて大声を出すと止めた。
「どうされたのですか?おじさま」
よく意味の分からないモアが首を傾げている。
「聞きたいかい?くっくっくっ」
「はい、って言うか『興味津々』?」
「ダメ、ダメったらダメであります!!」
クルルズラボにケロロの叫び声が響いていた。


その頃、日向家の庭先では

「ギ〜ロロ♪」
「な、なんだ?夏美」
洗濯物を畳み終わった夏美がギロロの処へと戻って来たのだ。
「お散歩行こ?」
「おさんぽ〜?」
どういう訳か夏美がギロロをお散歩に誘っているのである。
目を丸くしているギロロに夏美は理由を説明し始めた。
「だってアンタ『番犬』なんでしょ?」
「この家とあたしを守ってくれるんでしょ?あたし今から出かけるんだけど一緒に来てよ」
「なぜ俺がお前の散歩に付き合わねばならんのだ」
『一緒にお散歩』という言葉に顔を真っ赤にしながらもギロロは顔を背けるとぶっきらぼうに返事をした。
「要人警護」
「は?」
「あんたに『番犬』としてあたしの警護を頼もうかと思ってさ、強い軍人の警護なら頼もしいじゃない」
「それともか弱いあたしが誰かに襲われてもあんた平気なの?」
夏美はわざと可愛らしいポーズをとって見せた。
「か弱い?」
「なんか言った?」
「い、いや……け、警護なら仕方がないな…そ、それも軍人として大切な任務だ」
「じゃ、き〜まり…公園にでも行こうよ」
夏美は立ち上がるギロロの手を取ると足取りも軽やかに歩き出した。



「なるほど、夏美殿の言う『犬』にはいろいろと思惑がありそうでありますな」
「ギロロが完全に敵の手に落ちたとすると……困ったものであります」
ラボでモニター画面を見ていたケロロは大きく頷いた。
「おじさま、さっきのクルルさんの話しなのですけど……」
どうやらモアはまだ先程の話しが気になるようである。
そんなモアにクルルは説明を続けようとしている。
「だからよう、夜はバ……」
「あーーーっ、もういい加減にするであります!クルル!!」
大騒ぎするケロロ達をよそにモニターには夏美とギロロが楽しそうに公園を目指して歩く姿が映し出されていた。





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