跡ジロ

□So,だから僕は
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久しぶりに部活がなく跡部は慈郎と出かけていた。
楽しそうに会話をしていたのだが。

「跡部景吾!」

ヒステリックな女の声。
それにより否応なく会話を中断させられ名前を呼ばれた跡部は立ち止まり振り返る。
道の真ん中。人波は三人を避けていく。
跡部が振り返った先にいたのはいかにもお嬢様という雰囲気を漂わせた女。
跡部は訝しげに女に視線を向ける。
見覚えがない。

「誰だ」

跡部の問い掛けに女は顔に怒りをたたえる。

「誰ですって?青稀よ」

その名に思い当たりがあった跡部はあぁ、という顔をする。
一人会話についていけない慈郎は跡部の服を引っ張った。

「慈郎、大丈夫だ心配すんな」

跡部がそう言うと慈郎はそっと頷き傍観をする体制に入る。
青稀と名乗った女はそれを見ると怒った声で言った。

「跡部景吾、あんた今日恋人とデートだからって言わなかった?」

そして慈郎を見る。
突然向けられた視線。
それに驚き固まる。跡部はそんな慈郎を背後に庇うように移動する。

「あぁ、まぁ元々見合いなんてする気はねぇがな」
「見合い?」

慈郎の問い掛けに跡部はわざわざ青稀に聞こえるように大袈裟答える。






「断ったけどな。俺にはお前がいるし」

それを聞き青稀は慈郎を睨む。
確かに顔は可愛いし背も小さいし線も細い。
だけど男。
冗談じゃない。

「ちょっと、こいつ男でしょ?何よ恋人って」

すると跡部は意地の悪い笑みを浮かべた。
そして慈郎の肩を抱いた。

「悪いかよ。俺はこいつが好きなんだ」

青稀が声を出せないでいると跡部は道の往来でたくさん人が行き来している場所だということを無視し慈郎の顎に手をかけた。
公衆の面前だということを知っている慈郎は慌ててその手をどかそうとするも間に合わず。

道のど真ん中。

跡部は慈郎にキスをした。
反論しようとした慈郎が口を開く。そのできた隙間。そこから舌をさし入れ慈郎のそれに絡める。
すると慈郎はくぐもった声を出す。

「んっ、ふぅ」

苦しそうに跡部の背中を叩くと跡部はようやく唇を離した。

「分かったろ?」

青稀にはもう反論の余地はなかった。

「そんなことされちゃ、あたし、どうすればいいのよ。
あんたに見合い断られてプライドも何もズタズタよ」
「んなもんお前の問題だろ。俺に当たるんじゃねぇ
それに慈郎には関係ないことだろ。巻き込むな」

青稀はどうすることもできず立ち尽くす。
跡部はそんな青稀を無視し慈郎の腕を引いた。
先ほどのキスでまだ赤くなったままの慈郎の手を握りその場を立ち去る。

「あ、跡部…」
「アーン?足りねぇか?キス」

黙っていたらまたされそうなので慈郎は首を思いきり横に振った。
それを見ると跡部は小さく微笑んだ。

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