跡ジロ

□金の月と飛行機雲
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そろそろ暖かくなってくる季節。
部活動に打ち込むのには調度いい気候なのでコートには活気が満ちている。
それはレギュラーだろうとなかろうと関係ないはずなのだが。
いささかレギュラーに活気がない。普通ならレギュラーが1番活気に満ちているだろうと周りは思うのだが、今氷帝テニス部はまったく逆だ。

「なんかさ〜、こんな日って眠くならない?」
「ジローはいつもだろ」

岳人の言葉にちぇ、と言い頬を膨らませると周りから軽く笑い声が漏れる。
ちなみに今跡部はいない。ここ最近生徒会の仕事をサボって部活に来ていたため仕事が溜まってしまっているらしい。
跡部に言わせれば家でやれるというわけなのだが、他の役員が許してくれず机に向かっている。
跡部本人は慈郎を敵だらけのテニスコートに一人にしたくない。まぁその気持ちが積もりに積もった仕事という結果を出してしまったわけだが。
そんなこんなで今慈郎のそばに跡部はいない。
普段跡部のせいで慈郎に近づけない皆はこれをチャンスだと考えた。
そのためこんなに部活日和だというのにレギュラーにやる気がないのだ。

「慈郎、せっかくだから、」

宍戸の言葉は遮られた。

「オイ、てめぇら何やってやがる?」

慈郎以外のメンバーの動きが止まった。

「跡部ー、仕事終わったの?」
「あぁ」

当たり前だろ?という顔の跡部は慈郎を引き寄せ肩を抱いた。

「アーン?そんなに走りてぇのかてめぇらは」

跡部にそう笑顔で言われ皆、口々に部活へ行こうと周りを促す。
この場に自分と慈郎だけとなったことを確認すると跡部は慈郎の肩を名残惜しそうに離し座りやすくする。

「何してたんだ。ここで」

跡部の問いに慈郎は少し間を持たせて答える。
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