跡ジロ

□サクラ舞う
1ページ/1ページ

春という季節は、跡部にとって忙しい季節だ。生徒会長として新入生の為の学校説明、テニス部部長として新入部員の指導。
休んでいる時間が惜しい。
そんなことで心身共に疲れている跡部。
昼休み。
春はいつも、跡部は慈郎とグラウンドを見渡せる桜の木の下で昼食を取っている。屋上でもいいのだが、春の暖かい陽気が外へと誘う。
今は桜の花は満開。時折待ってくる花びらを堪能しながら昼食を食べていたのだが、跡部は時々はしを止め、ぼうっとしている。

「跡部、どしたの?」
「ん、あぁ」

いつもと違う様子の跡部に不思議そうな顔をする慈郎。
しばらく2人でグラウンドを取り囲むように咲く桜を見ていたのだが、時折眠そうに目を擦る跡部に気付いた慈郎は跡部の腕をひいた。

「慈郎?」
「疲れてるんでしょ?
 今日はオレが甘やかしてあげる」

跡部の頭を自分の膝の上へ乗せ、膝枕の状態を作る。
慈郎はいつもと逆だね、といい微笑んだ。そして手で跡部の髪の毛を梳く。

「昼休み、終わったら起こすから、寝てていーよ」

余程疲れていたのか、優しげな声音に完全にいつもと逆だと思いながらも、跡部の意識は眠りの縁へ沈んでいった。
跡部が眠ったのを確認するとジローは

「きっと昼休み終わっても起こせないんだよね、オレ」

そう呟き跡部に視線を落とした。桜の花びらが降ってきて髪の毛につく。
綺麗な寝顔を見て慈郎自身も眠くなってきた。
もう少しいつもは絶対に見せてくれない跡部の珍しい寝顔を堪能したいとも思ったが、春独特の空気がいつもの眠気に拍車を掛け、起きていることは諦め、静かに目を閉じた。
昼休みなんてとっくに終わった数時間後、跡部に起こされるんだろうな、と想像しながら。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ