novel

□続・幸せは向日葵の向こうに
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暖炉からカルシファーが出るとき、大きな照明の明かりを消してしまったものだから、部屋はとたんに明るさがぐんと落ちた。
部屋の壁に何か所かかけられたろうそくの明かりが、ほんわりと灯るだけ。

「…どうしたの?カルシファーまで追い出して」
ハウルがソフィーの背中に腕を回した。
ハウルから肩に両手を置いてゆっくり体を離して、呼吸を整えた。
うつむいていた顔を少し上げて、ハウルを見る。
こんな状況で、ソフィーから唇を重ねるのには少し勇気がいったけれど。
でも…ハウルが欲しかった。
言葉では、とても表せないから。
今のこの狂おしいくらいの気持ちは。
だから、ハウルの唇にそっと唇で触れた。

「…ソフィー?」
ソフィーの行動がよくわからないハウルは訝しそうにソフィーの顔をのぞきこむ。

「…ハウル…、『予約』したでしょう?私の…どきどきしてる音…聞いて?」
素直に、してほしいなんてやっぱり言えずにとぎれとぎれに言葉をつないだ。

「…今なら、いいの?」
そう聞き返すハウルの目の中に、ふっと炎が灯ったのを見逃さずに。
ソフィーはこくりと小さくうなずいた。
「…っ」
一瞬の時を待たずに、ハウルが唇を塞いだ。
抱きつくソフィーを離さずに、その吐息までからめとる。

不思議と、こんなところで恥ずかしいとか、いけないとか、そんな気持ちが出てこなかった。
自分から求めたことに対しても。

「……っん…」
キスされながら胸の前をはだけられた。
白い胸元があらわになる。
長椅子の上でハウルの膝に向かい合って座るような状況では、すべて脱がされることもかえって難しくて、半端に乱れた服が余計にハウルを煽った。
「…どきどきしてる?」
あえて、ソフィーの素肌に触れずに、つとめて冷静にハウルが聞く。
自分だけが熱を帯びているようで、自分だけがしたがっているみたいで、かっと赤くなった。
胸も、肩も、ぴくりとわずかに震える。
触れてくれるのを、待っている。

ソフィーの胸元あたりから、見上げるようにソフィーの顔を見てささやく。
「…どきどきしてるの?ソフィー?」
「…っ…」
自分の欲情を指摘されているみたいで、ハウルが少し憎らしくなる。
でも言わないときっと触れてもらえない…。
「…っきどきしてる…。ずっと、ハウルに…」
喘ぎそうになる吐息の中から、それだけをしぼりだした。
ハウルがにこっと笑う。
「…よくできました」
そう言うと、はだけられた胸に口づけた。
そのまま口づけで胸の鼓動を確かめる。
「あっ…ふぅっ…!」
急に素肌に与えられた舌と唇の愛撫に、思わずハウルの服を握りしめた。
まだハウルはしっかり服を着ていて、自分はこんな淫らな格好になっていて。

「…ソフィー、すごくどきどきしてる」
なんだかハウルがすごく冷静に言うから、自分の熱が一方的な気がしてとたんに恥ずかしくなった。
急に、こんな場所でこんな体勢でこんな姿の自分が、理解できないくらいいやらしく思えてきた。
「…や…やっぱり…こんなとこで、しな…」
ハウルの肩に置いた腕をくっと伸ばして、体をひきはがした。
ハウルは食べはじめた獲物を急に取り上げられた獣のように不機嫌な顔をする。

「…止められると思ってるの?」
確かに自分から誘っておいて身勝手だと思う。
だけど…
「だ…だって、どきどきしてるのは私だけなんだもの…っ」

だから恥ずかしい。
ハウルも同じだけ、いやそれ以上に求めてほしいのに。
いつからこんなにわがままになったんだろう。
いつからこんなに身勝手になったんだろう。

「…自分だけがどきどきしてると思ってる?」
「え…?」
体を離そうと突っ張る右腕をいとも簡単にハウルにとられた。
そのまま、手のひらをハウルの左胸におしつけられる。
「…!」
手のひらに感じるハウルの鼓動が、大きくて、速くて…驚いた。
「…君が」
しっかりとソフィーの目を見据えたまま、ぐいと体を引き寄せられる。
「君がこんなふうにさせてるのに…やめる?」
自分がどきどきしているのと同じだけ、強く、速く、鼓動が手のひらに伝わってくる。
私がここに戻した、ハウルの心臓…。
あの心臓が、私にどきどきしてる。
その鼓動を速めてる。

「…ソフィーだってこんなに感じてるくせに」
「あっ…やっ…!」
スカートの裾からハウルの手が侵入して、ソフィーの熱が集まるそこを確かめるように撫でた。
胸への愛撫だけでそこはすでにとろけていて、すんなりと指を受け入れてしまう。
「…あっ…ああっ!んっ…やぁっ…」
スカートの中で蜜が掻き回される音がしている。
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