□風避け
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激戦の末に他国との戦に勝利し、馬に揺られ奥州へ帰る途中のことだった。

「…っ」

少し眩暈がして、一瞬視界が二重になった。

今日は朝から体調が良くなく、身体にだるさを感じていた。
現に今も頭がふらつき、手綱を握り締め眩暈に耐えながら馬に揺られている。
しかしそれを政宗様や他の奴らに言えば心配するかもしれない。
体調のことは誰にも言わず、いつも通りに振る舞っていた。

「だんだん寒くなってきたな。奥州に近づいてきた証拠か?」

「日が沈んできたせいもあるでしょう。今日はこの辺りで休みましょうか」

「いや、まだ大丈夫だろ。先に進む」

「しかし、今日は朝からほぼ休みなしで移動しています故、そろそろ休んだ方が良いかと」

俺の体調とは関係なく、今日のところは休むべきだと思った。
今回の戦は敵も強く、政宗様もかなり疲労されたはず。
その上、戦が終わったらすぐに奥州に帰るために馬に揺られ続けている。

俺自身の体調が悪いこともあり、政宗様が風邪を召されることを想定してしまうのだ。

しかし政宗様はまだ休む気はないらしく。

「行きの途中に成実と一緒に景色のいい丘を見つけたんだよ。あの丘で休みたい。いいだろ?」

「…分かりました」

寒さに加え朝よりも風が強くなってきたのを感じ、せめて政宗様に風が当たらぬよう自分が風避けになる位置に移動した。










「着いたぜ!」

辺りはもう暗くなっていた。
政宗様の一声で皆馬を止める。

「暗くて景色は見えねえけど、星が最高に綺麗だな」

「梵が星見て感動するなんて意外だな〜」

「うるせぇよ成実!」

政宗様と成実の会話を耳に入れながら、馬から降りようとした時。

「―…っ!」

先程よりも激しい眩暈に教われ、身体が地に沈んだ。




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