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□次の約束をきかせて
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久々にお互いの休日が重なり、当然の如く沖田はその前日に志村家へ泊まりに来ていた。


新八の姉の妙が不在の志村家は、新八が主ではなく沖田が主のようになっている。

普段から自然な振る舞いで偉そうな沖田と、普段から自然な振る舞いで世話焼きの新八が一緒にいるために自然とそうなるのだ。

沖田が家に来た時新八は、それはもう甲斐甲斐しい程に沖田の世話を焼く。


「これ洗濯しといてくれぃ」

沖田が隊服のシャツとスカーフを持ってのろのろと新八に近付く。

「急ぎますか?」

新八も慣れたもので、沖田から洗濯物を受け取った。

「明後日までに着れるように」

「…じゃあ今洗濯機まわして部屋干ししちゃいましょうか」

「頼まぁ」


まるで『沖田の洗濯物は新八がするのが当然』であるかのような態度の沖田。


だが実は、沖田の方が新八にベタ惚れなのだ。

淡泊過ぎる程に淡泊な新八を沖田は追い掛けまわし、やっと手に入れた。

その時の沖田は願いは叶うもんだな、と大いに感激したものだ。


なので沖田は、新八とこうして一緒にいられるだけで満足していた。


このように甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるのは、何も自分だけではない。
万事屋の連中然り、姉の妙然り。

今はまだ、新八の傍にいられるだけで良かった。



入浴も済み、夜の営みも終わった2人は1つの布団でうつらうつらとしていた。
沖田の手が新八の身体の拘束を緩める事は、まずない。

2人は隙間が無い程に肌と肌を寄せ合っている。

新八もそれに呆れ半分でも慣れてしまっているので、黙って拘束されていた。


「沖田さん?」

「んー?」

あくびをかみ殺して沖田が返事をする。

「明日デートしましょうか」

「デート?どこに行くんでぃ」

正直な話しをすれば明日の休日、沖田は家から一歩も出たくなかった。
家で新八と2人きりでいちゃいちゃして過ごす気だったのだ。

「僕たち付き合ってからデートらしいデートってした事ないじゃないですか。だから沖田さんとデート、したくて…」


こんな間近な距離で言われてしまったら頷くしか沖田には術がない。
それに、『沖田さんと』という言葉に不覚にもキュン、と胸が高鳴った。



「じゃあ明日は俺と新八でデートだねぃ!」

胸が高鳴った勢いのまま沖田は新八をぎゅうぅ、と抱き締めて機嫌良く言った。

「…はいっ!明日はお弁当でも作りましょうかっ!」

新八も抱き締められた勢いでぎゅうぅぅぅ、と沖田を抱き締め返して明日のデートに思いを馳せる。

「いーねぃ弁当!デートっぽいじゃねぇかぃ!」

ケラケラと2人して笑い合い、布団の上を転がった。


「……あ、でも…」

なにか重大な事を思い出したかのように新八が呟く。

2人して転がって、ちょうど新八が沖田の胸の上にきた時だった。

「ん、どーしたぁ?」


「…どこに行きましょうかねぇ?」

「あ……」

考えていなかった。





新八が7時に起きて今日の弁当を作り出す。

沖田は新八が1人で布団から出る事を最後まで渋っていたが、眠気には勝てずに未だ布団の中だ。

8時半頃に弁当も出来上がったので、新八は沖田を起こしに行った。

寝惚けた沖田に布団に引きずり込まれそうになったが、そこは新八が一発ブン殴って無理矢理沖田を覚醒させた。


「愛が痛ぇよ…」

「いつまで経っても寝惚ける沖田さんが悪いんです」

「………弁当は?」

「あ、出来てますよっ!さぁ顔洗って来て下さい!朝ごはん食べたらデートしましょー!」

朝から張り切って弁当を用意してくれた恋人の姿を見て、沖田は笑みがこぼれる。


「朝メシは?」

「焼き鮭と味噌汁とだし巻きです」

「…お前ぇの作る朝メシは世界一だぜぃ」

沖田はすれ違い様に新八の頬にちぅ、と軽いキスをする。

恥ずかしがって怒られるかと思いきや、新八は頬を押さえてふにゃりと笑っていた。


「ふふ…、なんか……いい感じですねぇ…」

「!」



参った。
恥ずかしがらせてやろうとしたのに恥ずかしがってしまった。

赤くなる頬が抑えられない。
新八がこんな事を言うのは珍しい。


沖田は今になって幸福感が込み上げてくる。

「?…どうしたんですか?」

沖田が1人で幸せに浸っていると新八に声を掛けられる。

「……いや、なんでもねぇや」

「?そうですか??…とりあえず顔洗って来て下さいよ」

「おぅ」



新八が作った朝ごはんは最高に美味しく、沖田はやはり幸せをかみ締めていた。





とりあえず2人が行った事のない場所へ行こう、という事になった。

要するに当てもなくブラつく、という事だ。


昼時になれば新八が作った弁当を広げて食べて、またブラリとすればいいだろうという安易な考えである。




「わぁっ!結構広いですねぇっ!」

「すげぇなぁこりゃ…」


2人が当てもなくブラついて辿り着いた先には、一面の向日葵畑が広がっていた。
向日葵の名に恥じないよう、全ての花が太陽の方を向いている。


「穴場なんじゃないですか!?僕らかなりラッキーですよー!」

穴場のような場所を見つけて一気に元気になった新八。
それくらい壮観な風景だった。

「ラッキーじゃねぇかぃ。……じゃーこの向日葵たちを眺めながら昼メシでも食うかぃ?」

「はいっ!」


ちょうど向日葵畑全体を望める木陰で、持って来た弁当を広げる。
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